【河北新報111015】東日本大震災で岩手県宮古市以北の岩手県沿岸中部から北部の津波が高かったのは、震災の本震後、三陸沖で二つの小断層が破壊されたためとする研究結果を東大地震研究所の研究グループがまとめた。研究グループは「震源域から遠い岩手で、なぜ波高が高いのか謎だった。近くの発生源から津波が来たため高くなったとみられる」としている。
静岡市で開かれている日本地震学会で14日、発表した。津波は一般的に震源域に近い所ほど高い波が観測され、リアス式海岸では地形などの影響で巨大化しやすいとされる。研究グループの原田智也東大地震研特任研究員は「岩手の津波高は地形の影響だけでは説明がつかず、これまでの研究モデルで計算しても一致しなかった」と言う。
原田特任研究員は本震の発生から3分後、震源域の北部、三陸沖の日本海溝付近で小断層が2分間にわたり破壊されたと想定。その5分後、さらに北部の小断層でも破壊があったとして津波高を計算した。結果は海底津波計で計測された波形とも、現地調査での津波高ともほぼ一致したという。
さらに明治三陸大津波(1896年)の直後、岩手県沿岸の津波高を調査した文書とも照合したところ、今回調査した津波高と類似していた。原田特任研究員は「明治三陸地震の震源とほぼ同じ断層が今回、2回にわたり破壊された可能性が高い」としている。
研究グループは震災後約5カ月間、青森県から千葉県の太平洋沿岸約300カ所を調査。岩手県沿岸中部から北部は津波高20メートル以上の場所が多く、陸地をさかのぼった遡上(そじょう)高が30メートルを超えたのは全て宮古市以北の約10カ所だったことも確認した。