福島県 「道路寸断福島・相馬地方 交通網整備 復興へ急務」

道路寸断福島・相馬地方 交通網整備 復興へ急務

福島県浜通り地方から福島市などへのアクセス改善が期待されている「阿武隈東道路」=相馬市山上
福島県浜通り地方から福島市などへのアクセス改善が期待されている「阿武隈東道路」=相馬市山上

河北新報110726】東日本大震災で交通網に大きな打撃を受けた福島県相馬地方で、高速道路や国道バイパスの早期整備を求める声が高まっている。福島第1原発事故で国道6号の一部が通れなくなっているほか、JR常磐線の復旧も進まず、震災から4カ月半が経過した今も孤立状態。地元市長らは「復興には交通網整備が不可欠だ」と口をそろえ、北の仙台市や西の福島市に向かうアクセス道路の早期整備を求めている。
 相馬地方を含む福島県浜通りを南北に縦断する国道6号は、津波や地割れの被害に見舞われ、現在も一部で復旧作業が続く。さらに南相馬市原町区より南側は原発事故で警戒区域になり、通行禁止のままだ。

相馬市や原町区から、いわき市や首都圏へのアクセスは、福島市方面への迂回(うかい)が必要。いわき市の食品流通業者は「相馬地方への運搬は時間もコストもかかり、大変な手間だ」とぼやく。
 JR常磐線は津波で駅舎や線路が流された新地駅(福島県新地町)を含め、亘理駅(宮城県亘理町)から南は復旧の見通しが立っていない。南相馬―仙台を往復する代行バスはあるが、利用者からは「本数が少なく使いにくい」との不満も出ている。
 状況打開へ期待が高まるのが常磐道の早期整備。常磐道は今年12月、常磐富岡―相馬インターチェンジ(IC)の開通が予定されていたが、富岡町から南相馬市小高区までは警戒区域に入り、工事はストップしている。 「9割以上完成している」(国土交通省)という原町区から北の工事が5月に再開されたが、資材不足などでなかなか進まない。結局、富岡町から相馬市までの開通時期は未定のままだ。
 南相馬市の桜井勝延市長は「原発事故が収束しないため、富岡町―相馬市の工事は暗礁に乗り上げている状況だが、復興のためにはまず、原町区から北の区間の早期整備が不可欠だ」と前倒しを訴える。
 相馬市と福島市を結ぶ国道115号のバイパス「阿武隈東道路」(10.7キロ)も、5月に工事を再開した。将来は福島―山形―秋田県をつなぐ東北中央道(268キロ)の一部となる。相馬市の立谷秀清市長は「東北中央道は、首都圏と相馬地方を結ぶ重要な幹線道路だ」と期待する。
 バイパスの工事進展率は約50%。東北地方整備局磐城国道事務所の柴田孝助・副所長は「震災で人材や車両の確保が難しい状況だが、5年後の16年度には完成できる見通しだ」と話している。