宮城県 「(3)ものづくり/企業流出防ぐ施策を」

(3)ものづくり/企業流出防ぐ施策を

豊田社長(右奥)と会談する手前左から村井宮城県知事、達増拓也岩手県知事=19日、宮城県庁
豊田社長(右奥)と会談する手前左から村井宮城県知事、達増拓也岩手県知事=19日、宮城県庁

河北新報110730

<「大きなお土産」>
 「ものづくりを通し、被災地の方々と一緒に東北の未来をつくりたい」
 仙台市のホテルの記者会見場で今月19日、トヨタ自動車の豊田章男社長が高らかに宣言した。
 豊田社長は「東北復興支援策」と銘打ち、宮城県内でのエンジン工場新設や企業内訓練校開設などのプロジェクトを発表。復興の道を歩み始めた被災地は「大きなお土産」(村井嘉浩宮城県知事)と受け止めた。
 県震災復興計画2次案で、県は「ものづくり産業の早期復興」を産業施策の柱に位置付けた。被災中小企業の復旧支援とともに自動車、電子機械を軸とした産業集積を前面に出す。トヨタの取り組みは、2次案の実現を後押しすると期待が高まる。

<見通し立たない>
 震災から4カ月が過ぎ、製造業の復旧のスピードと復興への意欲は、県の想定を上回っている。県内148社を対象に実施した県の調査によると、津波に見舞われなかった内陸部を中心に64%の企業が、震災前の受注水準を回復した。
 中小企業グループに施設や設備の復旧費用を助成する県などの制度には、65億3000万円の予算枠に対し、製造業を中心に217件1249億9600万円分もの申請があった。
 内陸部を中心に県内製造業の復興への足取りは、力強さを増す。一方で壊滅的な被害を受けた沿岸部は、生産再開の見通しすら立たない企業も多い。大規模な地盤沈下に加え、被災市街地での建築制限も企業活動再開の足かせとなっている。

<スピードが勝負>
 沿岸部のある工場は設備が完全に水没、被害は数十億円規模に上った。同社幹部は「地震や津波の再来の恐れもある中、操業を続ける意味をどう考えるか。(県外に)出るか出ないかの議論になるのも当然だ」と言う。現状認識は厳しい。
 ものづくり産業の復活は、村井知事が掲げる「富県戦略」の大前提となる。「企業は5年も10年も待ってくれない。この半年、1年が勝負だ」とみる県幹部の表情には焦りの色が浮かぶ。
 県は2次案で復旧期とした最初の3年間に、設備の復旧支援や融資制度の充実を盛り込んだ。迅速な施策展開はもちろん、県外移転しかねない被災企業を踏みとどまらせる力強いメッセージ性も、復興計画に欠かせない要素になっている。
 日本政策投資銀行東北支店(仙台市)の深井勝美東北復興支援室長は「(2次案は)平時の延長にすぎない印象がある。未曽有の震災を経験した県だからこそ、今アピールすべきことがあるはずだ」と注文を付ける。
(加藤健太郎)

◇主な事業と実施年度
・中小企業等施設設備復旧支援事業   (2011~13)
・相談助言事業            (2011~13)
・被災中小企業者対策資金利子補給事業 (2011~15)
・中小企業者販路開拓・取引拡大支援事業(2011~15)
・自動車関連産業特別支援事業     (2011~20)