震災影響し転入敬遠、企業は脱出・・・人口減の千葉
【読売新聞120131】千葉県が30日発表した今年1月1日現在の県内推計人口は、昨年同時期を1万693人下回る620万6334人となり、比較可能な統計がある1961年以降、初めて人口減に転じた。
少子化に加え、東日本大震災の影響とみられる。人口減は税収減などにつながるため、県や自治体は減少が一時的なものかどうか、推移を注視している。
◆県北西部「反転」
県内54市町村のうち、最も人口が減ったのは市川市の2631人、次いで松戸市が1916人、浦安市が1423人と続いた。
これまでは、主に県南部で人口が減る一方、千葉市や県北西部に県外から流入し、県全体では人口が増えるという構図だった。だが、2010年は県外との出入りで1279人の転入超過だった松戸市が、昨年は1573人の転出超過に反転するなど、県北西部での人口流出が目立ち、県全体では1万1418人の転出超過となった。
昨年1年間の出生数は5万1294人で、死亡数を523人下回り、初めて自然減となった。少子化のため出生数は年々減少していたが、増田勝幸・県統計調査室長は「出産を控えた若い世代が転出したり、県外から転入を敬遠されたりした可能性がある」と述べた。
◆柏市は微増だが
人口減の具体的な原因について、浦安市は「液状化被害を受けた地域の賃貸物件からの転出が目立つ。復興を急ぐ必要がある」としている。JR新浦
安駅周辺では、需要が見込めないとして、着工が先送りされたままのマンション建設用地が目立っている。
また、東京電力福島第一原子力発電所事故の影響で、局地的に高い放射線量が測定されている柏市は、「世帯ごとの転出が多く、子供への影響が懸念される放射線問題が背景にある」(情報政策課)と見ている。同市の人口は10年は前年比6804人増だったが、昨年は424人の微増にとどまった。市の調査では5~9月に幼稚園児と小中学生が計約100人減少した。
企業が東京周辺への一極集中を見直した影響を指摘する声もある。第一生命経済研究所の永浜利広・主席エコノミストは「電力不足や放射能、首都直下型地震のリスクの影響で多くの企業が西日本に拠点を移し、それに合わせて人も移動した」と分析する。
◆東京圏で唯一
県の人口が再び増加に転じるかどうかは、今後の転入者の推移次第だが、先行きは暗い。東京、神奈川、埼玉、千葉4都県の「東京圏」に、地方から人口が移動してくるという流れが弱まっているためだ。
国立社会保障・人口問題研究所は「少子化により、就職などで東京圏に出てくる可能性のある若年層の人口自体が減っている。当面、転入が増えることは考えづらい」と分析している。
総務省の住民基本台帳人口移動報告によると、昨年は東京圏で千葉県だけが転出超過に転じており、千葉県は他の3都県との争いに敗れた形となった。松戸市の担当者は「放射能問題だけでなく、子育て支援環境などの面で自治体間の競争社会に入ったことも影響したのではないか」と話している。
県人口、震災で初のマイナス 葛南地域は2320人減
【東京新聞120131】県が三十日に発表した昨年末時点の県人口は、統計が残る一九二〇(大正九)年以降、初めて減少に転じた。県内十一地域で人口が伸びたのは二地域にとどまり、特に二〇〇九年から一〇年にかけ、一万九百九十九人も増えていた市川、船橋、習志野、八千代、浦安各市の「葛南地域」は二千三百二十人減の大幅マイナスになった。県は東日本大震災の影響を認め、中長期的な人口減に転じたかどうかは「慎重に見極めたい」としている。 (堀場達)
昨年末時点の県人口は六百二十万六千三百三十四人で、一〇年末を一万六百九十三人下回った。
市区町村別で減少数が最も多かったのは、市川市の二千六百三十一人で、松戸市が千九百十六人で次ぎ、浦安市が千四百二十三人で続いた。
人口減について浦安市は「液状化の影響で転出した数も上乗せされているかもしれないが、震災の影響で転出した人たちは今後、復旧復興が進めば戻ってきてくれるだろう」との見方を示した。松戸市の本郷谷健次市長は「減少が長期的なものになるのか注視したい」と話した。
大気中の放射線量が比較的高い「ホットスポット」と呼ばれる柏市は四百二十四人増。柏や流山、松戸を含む「東葛地域」の六市は計約五百人増となったが、一万人以上の増だった一〇年末と比べ、伸びは急激に鈍化した。
柏市は「税収に直結し、由々しき問題と捉えている。人口流出より、放射能問題でイメージが悪化し、転居先として選ばれにくくなっていることが実情だろう」とみている。
千葉市は全体で三百六十三人増だったが、市内六区のうち、美浜区で七百九十二人、稲毛区で五百二十人、若葉区で五百八十一人それぞれ減らした。
県統計課は人口減の要因として「震災による影響が大きい」と認める。液状化や津波被害のあった地域や東葛周辺で人口の顕著な動きがみられることなどから「子どもを産み育てる世代が放射能の不安などから、転出したり、転入しなかったりが考えられる」と指摘する。
県は一〇年に策定した県総合計画で、人口は一七年をピークに減少に転じると試算していた。県政策企画課は「震災からの復旧復興が進み、放射能の不安が解消されれば戻ってくるものなのか、計画を前倒しすべきなのかは、今後の検討課題」としている。
千葉県人口初めて減少 1年間で1万693人 2011年調査
【千葉日報120130】2011年の千葉県人口は、統計がある1920年以降で初めて減少に転じたことが30日、県の常住人口調査(今月1日現在)で分かった。県総合計画では、県人口は2017年にピークを迎えると推計しており、人口減が予想より7年前倒しとなった形。東日本大震災後、周辺より空間放射線量が高い「ホットスポット」の出現に伴う転入者の減少などが要因とみられる。今後、復興とともに人口が再び増加する可能性もあるが、本格的な人口減少時期に備え、各自治体や企業は、財政運営や経営戦略の見直しを迫られそうだ。
調査によると、今月1日現在の県人口は620万6334人となり、1年前と比べ1万693人(0・17%)減少した。転出者が転入者を上回る社会減(1万170人)に加え、死亡数が出生数を上回る自然減(523人)が重なった。いずれも初めてマイナスに転じた。
県統計課は「震災による人の動きが大きく関連している」と分析。他県との人口の出入りをみると、前年の転入超過から一転、11年は転出超過となった。
自然減についても、県は「放射能問題を受け、出産予定の人が県内からほかの自治体へ転出したり、転入予定者がほかの自治体を選択したケースも多かったのでは」として、震災の影響を指摘する。これまでは逆に、出産を機に都内から県内へ引っ越しをする傾向があったという。
地域別では、これまで人口増をけん引していた市川市、船橋市、浦安市などの「葛南」が最大の2320人減。「千葉」と「君津」も減少に転じた。松戸市、柏市、流山市などの「東葛飾」は増加にブレーキがかかった。