石巻の避難所生活1900人、仮設空き室1200戸
【河北新報110902】東日本大震災の被災者約1900人が市立小中学校などの避難所60カ所に身を寄せる石巻市で、河北、河南、桃生地区など市内陸部の仮設住宅約1200戸が空き室となっている。避難者の間で通勤や通学に便利な市中心部の仮設住宅の人気が高く、震災前の生活圏から離れた土地への転居には強い抵抗感があるためとみられる。
市によると、完成した仮設住宅5314戸(8月12日現在)のうち入居したのは4075戸。市が必要戸数とした7300戸が今月中旬にも完成予定だが「市中心部の仮設住宅の当選を待っている人が多く、今のペースでは全戸完成後も空き室が出る可能性が高い」(市建築課)という。
合併前の旧市から数十キロ離れた河北、河南、桃生地区では、計720戸が空き室となっている。門脇中で妻と同校に通う孫娘の3人で身を寄せる無職男性(73)は河北地区の仮設住宅への入居を勧められたが辞退した。
男性は「孫が部活や勉強、友人関係を大切にしたい多感な時期を迎えている。孫の生活を変えてまで入りたいとは思わない」と話す。
一方、市中心部から内陸へ車で10分ほどの同市南境の仮設住宅は、旧市内にもかかわらず、交通事情が悪いことなどから避難者が入居を断るケースが少なくない。
門脇中で生活する無職女性(54)は同地区の仮設住宅に2度当選したが、入居を見合わせた。
女性は「市中心部の会社に勤める息子は車を持たず、勤務時間はまちまち。バスなど限られた交通機関の時間に合わせて仕事を切り上げるわけにもいかない」と話す。
市は今後、合併前の旧町地区に巡回バスを配備するなどして入居を促す考えだ。市は「震災前の生活圏から離れた地域に抵抗感があるのは分かるが、仮設住宅を立地できる場所は限られている。現状を何とか理解してほしい」と話している。