海水注入、実は原発・吉田所長が独断で継続

読売新聞110526東京電力福島第一原子力発電所1号機の炉心を冷やす海水の注入が、東日本大震災の発生翌日に一時中断していたとされる問題で、東電は26日、「実際には海水注入は継続していた」と発表した。

 同原発の吉田昌郎(まさお)所長が、事態の悪化を防ぐため必要と判断し、東電本店の意向に反して独断で継続したという。この問題をめぐっては、政府・東電統合対策室が中断の根拠として示した班目(まだらめ)春樹・内閣府原子力安全委員長の発言内容が訂正されたばかり。政府・東電の情報発信のあり方が改めて問われそうだ。

 統合対策室は21日、海水注入中断の経緯を公表。その中で、東電は3月12日午後7時4分に海水の試験注入を始めた後、原子炉の再臨界を懸念した官邸の意向に配慮し、7時25分に独断で注入を中断。その後、首相の指示を受け、8時20分に再開し、55分間の中断が起きていたとしていた。しかし、実際には、官邸詰の東電社員から「首相の了解が得られていない」との連絡を受け、東電は東電本店と第一原発を結んだテレビ会議で中断を決定。吉田所長は、この場で反論はしなかったが、独断で注水を継続した。

 午後8時20分に注水を再開したとの連絡が、吉田所長名で入ったため、東電は中断が起きたと判断した。東電は今月24、25の両日、吉田所長らに聞き取り調査を実施。吉田所長は事実を明かした理由について「国際原子力機関(IAEA)の調査もあり、正しい事実に基づき評価が行われるべきだと考えた」と説明したという。吉田所長は1979年入社。昨年6月から所長を務めている。

 東電の松本純一・原子力立地本部長代理は「最初に公表した調査結果は、本店の関係者と、本店に残っているメモだけを基にした」と調査が不十分なまま公表したことを認めた。