新防潮堤は最大15.5M 県計画、震災の津波下回る
【岩手日報110927】県は26日、東日本大震災の津波で被害を受けた本県沿岸部のうち、陸前高田市の広田湾や大槌町の大槌湾など10地域の新たな防潮堤の高さを公表した。全地域でこれまでの防潮堤以上となる最大9・7~15・5メートルで整備するが、洋野・久慈北海岸を除いて、今回の震災の津波の高さよりは低い設定となった。県は早いところは年度内に整備に着手、5年程度での再建・復旧を見込む。
同日公表したのは▽洋野・久慈北海岸(洋野町平内地区、久慈市侍浜地区など)▽野田湾(野田村野田地区など)▽普代海岸(普代村宇留部地区など)▽田野畑海岸(田野畑村島越地区など)▽岩泉海岸(岩泉町小本地区など)▽宮古湾(宮古市宮古港地区など)▽山田湾(山田町山田地区など)▽大槌湾(大槌町大槌地区など)▽越喜来(おきらい)湾(大船渡市越喜来地区など)▽広田湾(陸前高田市高田地区)の10地域。
再建・復旧する防潮堤の高さはそれぞれ最大で普代海岸が15・5メートル、大槌湾が14・5メートル、広田湾が12・5メートル、宮古湾が10・4メートルなど。洋野・久慈北、普代、田野畑の3海岸は被災前の堤防と同じ高さとし、それ以外の7地域は従来より1・4~8・1メートル高くなる。
高さの設定に当たっては、1933(昭和8)年の昭和三陸大津波など数十年~百数十年に1度の頻度で発生する規模の津波を対象に設計。実際のデータに波のせり上がりや地盤沈下の影響を加味し、ある程度余裕を持って対応できる高さとした。
一方、今回の震災による津波を上回る高さの防潮堤はゼロ。県は過去最大クラスの津波に耐える防潮堤の整備は費用などの面から非現実的としており、住民避難を軸とする施策を組み合わせた「多重防災」で対応する。
ただ、15メートルの防潮堤整備を想定してきた陸前高田市など、一部の市町村では策定中の復興計画の見直しを迫られる可能性もある。
県は、国や市町村と調整の上、県津波防災技術専門委(委員長・堺茂樹岩手大工学部長)で審議して高さを設定。残る14地域は10月中に公表する。