宮城県 「仮設住宅敬遠 5400戸空家」

仮設住宅敬遠 5400戸空家

入居者がおらず、洗濯物も全く干されていない仮設住宅(8日、仙台市若林区卸町で)
入居者がおらず、洗濯物も全く干されていない仮設住宅(8日、仙台市若林区卸町で)

【読売新聞110713】東日本大震災から4か月が過ぎたが、本県でも一部自治体で仮設住宅への入居が進まず、空き家が目立っている。完成した仮設への入居率(6日現在)は全県で63・4%にとどまり、石巻市は38・2%と低さが際立つ。交通の不便さなどに加え、民間賃貸住宅への流出、行政事務の滞りなど原因は様々。仙台市の奥山恵美子市長は12日の記者会見で大家族に複数戸を提供する検討案を示した。(二俣友香)

 県によると、入居率が低い自治体は石巻のほか、東松島市(48・8%)、仙台市(54・0%)、塩釜市(59・2%)、女川町(64・7%)。いまだに1万3500人近くが避難所で劣悪な暮らしをしている一方で、約5400戸の仮設が空いている計算だ。

 仮設が敬遠される原因には交通の便の悪さやプライバシーへの不安などがあるとされるが、仙台市などでは民間住宅借り上げ制度がそれに拍車をかけている。

 県が民間賃貸住宅を借り上げ、仮設扱いで被災者に提供する。被災者自身が契約した物件も一定の条件を満たせば認められ、県が家賃を支給する。建設が追いつかない仮設の補完的役割として打ち出されたが、4日現在で県内の利用件数は想定を大きく上回る約1万1936件に上る。

 石巻市で自宅が津波で流された会社員女性(32)は、この制度を使って東松島市のアパートに両親と暮らす。「仮設はプライバシーが守られるのか不安だった。高齢者や障害者が優先で私たちには回ってこないとも思った」と話す。

 賃貸物件の多い仙台市では、同制度の申請が市の想定の8倍の約8000件(6月末時点)で、「仮設が埋まらない最大の理由は民間賃貸」と担当者も話す。

 同市は19日まで仮設入居者の最終募集を行っているが、空き屋がどれだけ埋まるか不透明だ。奥山市長は12日の会見で、空き家を「(入居者のうち)部屋数が足りない大家族世帯に使ってもらったらどうか」と、1世帯に複数戸を提供する案を示した。今後、実務担当者と協議するという。

 一方、石巻市では仮設は決して不人気ではない。

 「複雑な思いです」。同市の蛇田公民館で暮らす中西稚武さん(38)は、すぐ近くに建った仮設を見ながらつぶやいた。この避難所には今も約40人が暮らし、ほぼ全員が仮設への入居を希望しているが、入居者抽選で当選したのは1世帯だけ。同市の抽選は、いったん応募すると、その後に辞退したり民間賃貸に入ったりしてもリストから除外されないため、競争率が高止まりしているという。市が震災関連の膨大な業務を抱えるため、改善が進まないらしい。避難所は扇風機でしのげない暑さで、中西さんは「精神的にも体力的にも限界」と話す。