宮城県復興計画2次案固まる「職住分離」を堅持

河北新報110706】宮城県は5日、東日本大震災の復興計画第2次案を固めた。国と被災3県などによる「大震災復興広域機構」設立は断念し、計画案から削除。職場と住居を分ける沿岸部の「職住分離」方針は、県震災復興会議で異論が噴出したが堅持した。養殖漁業の民間参入を促す「水産業復興特区」創設は検討課題にとどめた。
 2次案は6月3日公表の1次原案に県議会、復興会議、市町村長会議などで出た意見を反映し、10年間に取り組む316の復興事業を列挙した。
 1次案に盛り込んだ広域機構の設立は、村井嘉浩知事が政府の復興構想会議で提起。復興庁創設が決まったため「被災3県と市町村の連携」に差し替えた。
 大津波で被災した沿岸部は気仙沼市など「三陸地域」、「石巻・松島地域」、名取市など「仙台湾南部地域」に分け、復興まちづくりのイメージ=図=を明示した。
 三陸、石巻・松島両地域は住宅や公共施設の高台移転、職住分離を基本に据え、港近くに避難ビルを建設する。仙台湾南部地域は防災緑地の整備と併せ、堤防機能を持つ盛り土構造の道路、鉄道で「多重防御」を図る。
 職住分離は県復興会議で複数の委員が「コミュニティーが壊れる」と指摘した。これに対し村井知事は「安全な場所に住むことは譲れない一線」として2次案にも明記した。
 水産業復興特区は復興構想会議の1次提言や水産庁の復興計画にも入った。だが県漁協が反発し、県議会にも批判が多いため1次案と同様「検討すべき課題」に位置付けた。
 復興事業では津波避難ビルの建設費を補助する「津波避難施設等整備事業」、燃料電池や蓄電池を導入した省エネ住宅を新築した際、費用の一部を助成する「分散型エネルギー設備導入促進事業」などを盛り込んだ。
 被災地の絆を強めるため、行政と住民の橋渡し役となる復興支援員の配置、外資系企業の研究開発部門誘致などの施策も打ち出した。
 県は2次案を6日に開く県復興本部会議で正式決定する。13日の県復興会議で説明し、パブリックコメントを開始。16~18日は村井知事ら幹部が出席し、県内5カ所で県民説明会を開く。県民の意見を踏まえ2次案を修正後、県議会9月定例会に議案として提出する。

◎復興計画の主な施策

一、漁港を3分の1程度に集約再編
一、復旧困難な農地の国による買い上げ、緩衝地帯(千年希望の杜グリーンベルト)の設定
一、復興住宅への太陽光発電設備の全戸整備
一、女川原発周辺の放射能等監視体制の再構築
一、「東日本復興特区」創設
一、首都代替機能の東北への整備