東部・丘陵再建に力点 仙台市、復興ビジョン策定
【河北新報110531】仙台市は30日、震災復興推進本部会議を開き、復興計画の素案となる復興ビジョンを策定した。津波被害を受けた東部沿岸地域の再生、郊外の丘陵団地で深刻な宅地被害の再建に力点を置いた。計画期間は2015年度までの5年間で、市民の絆や協働を重視し、減災や省エネルギーの考え方を中心にした「新次元の防災・環境都市」をコンセプトに据えた。
東部沿岸地域は、被害の程度に応じて3ゾーンに区分。今後の居住対策として(1)集団移転(2)宅地の盛り土などによる住宅の集約化(3)現地での市街地再生―を組み合わせ、被災者と協議を進める。移転先の候補として宮城野区田子、若林区荒井の両地区を明記した。
盛り土構造の仙台東部道路が、防潮堤の機能を果たした事実に着目。海岸と平行する県道塩釜亘理線を盛り土でかさ上げするとともに、海岸に丘を複数築き、防災林を植栽する。復興を後世に伝える憩いと交流をテーマにした拠点を整備する。
産業面では、東部地域を「農と食のフロンティア」と定義した。農地の再生や、農商工、産学官と連携した技術革新を実現し、新たな1次産業の創出を図る。
宅地被害では「所有者のみでの復旧は費用負担が大きく、放置すれば二次災害に拡大する懸念がある」と指摘。既存の支援制度の拡充だけでなく、同様の被害を受けた他の自治体と連携し、新制度の創設を国に強く要望する。
新次元の防災・環境都市に向けた施策として、震災で欠乏した燃料の備蓄に国や事業者と乗り出すほか、広域災害にも対応できる防災センターの建設を検討する。次世代送電網(スマートグリッド)や大規模太陽光発電所(メガソーラー)といった新エネルギー関連産業の集積にも取り組む。
迅速で確実な推進を担保するため、財政基盤を強化し、特別立法や特区制度を提案して国の支援を求める。市は今後、有識者会議を設けて議論を具体化させるほか、意見交換会やパブリックコメントを通して市民の意見を募り、10月末までに復興計画をまとめる。
<仙台市震災復興ビジョン(抜粋)>
【被災者の生活再建と被災地域の復興】
・仮設住宅の整備を7月末まで、宅地内 のがれき撤去を8月末までに完了
・被災者を臨時職員として雇用
・復興住宅の供給に向けて検討開始
・中小企業の二重ローンへの支援策を国 に要請
【復興に向けた新次元都市づくり】
・災害に強い広域交通ネットワークの整 備
・運営や備蓄、設備など避難所の見直し
・自然エネルギー先進地区の構築
・地域やNPO、企業との協働による復 興支援活動の推進
・「復興」「祈り」をテーマに被災地が連 携した新たな観光商品の開発