【読売新聞111201】仙台市の震災復興計画が30日、市議会本会議で可決、成立した。津波被害を受けた沿岸地域からの集団移転を進めるとともに、地滑り被害が発生した丘陵部の宅地復旧など、防災、安全や生活基盤の再建に主眼を置いた。計画期間は2011~15年度の5年間。計画実施による総事業費は1兆500億円を見込む。市は今後、計画に盛り込まれた事業を具体化する実施計画を年度内に策定する。
「100万人の復興プロジェクト」と題した復興計画には、地震や津波防災、住宅再建、農業の再生、エネルギー供給源の多様化などのプロジェクトを掲げた。
津波被害を受けた市東部の沿岸地域については、海岸に高さ7・2メートルの防潮堤を整備。さらに、海岸に沿って伸びる県道塩釜亘理線などを6メートルかさ上げし、「第2の防波堤」としての役割を持たせる。その上で、県道より海側を中心とする地域を災害危険区域に指定。住宅の建設を禁止して、区域内の約2000世帯の集団移転を進める。
集団移転では、独自の支援策も盛り込んだ。市有地に住宅を建設する場合、30~40年間、1000万円を限度に借地料を免除。移転対象地区以外から移転する場合にも、再建資金の借り入れ利子に対し、最長10年間助成金を支給する。
地滑り被害を受けた宅地の復旧にも独自の支援を行う。国の補助対象外となった800世帯の宅地復旧に、工事費用のうち100万円を超える費用の9割を助成する。
このほか、津波被害を受けた農地は、集約化や大規模化を推し進め、生産から販売までを農家自らが担う「6次産業化」を促進する。
また、宮城野区の南蒲生浄化センターでは、東北大や筑波大とともに、藻類から炭化水素を取り出す実証実験に取り組み、生物を使って石油を生み出す夢のプロジェクトに乗り出す。大規模太陽光発電の誘致も推進。多様なエネルギー源の確保を目指すエコモデルタウン事業に取り組む。
復興計画の決定を受け、奥山恵美子市長は「これから集団移転や宅地復旧の具体的な作業に移っていく。市民と二人三脚で、スピード感を持って取り組みたい」と述べた。