宮城県石巻市 「疲弊商店街、津波追い討ち 石巻中心部、再建に踏み出せず」

疲弊商店街、津波追い討ち 石巻中心部、再建踏み出せず

震災後、さらにシャッター通り化が進む中心商店街=石巻市立町
震災後、さらにシャッター通り化が進む中心商店街=石巻市立町

河北新報110901】東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県石巻市の中心商店街に、さらなる空洞化が懸念されている。復興需要で活況を呈す郊外の大型店に対し、中心商店街では既に廃業した店が出ている。震災から6カ月近くたった今も市の具体的な事業計画が見えず、再建に踏み出せない店主は多い。

 「店を閉めるという決断しかなかった」。石巻市中央2丁目で履物店を営んでいた藤沼信夫さん(81)は、市内の仮設住宅で寂しそうな表情を見せた。
 先代から90年以上続いた店は、1階が天井近くまで浸水した。シャッターはひしゃげて壁紙ははがれ落ち、修理用具や商品はすべて水に漬かって使い物にならなくなった。
 藤沼さんに、後継者はいない。「体が動くうちは続けたかった。ほかの商売仲間もつらい立場だと思う。商店街の行く末が心配だ」と話す。
 店舗・駐車場賃貸業「本家秋田屋」が中心商店街で貸し出す約20の物件のうち、震災後、半数以上が退去した。浅野仁一郎社長(60)は「行政の青写真も明確に出ていない。高齢の店主らは、再建を諦めざるを得なかったのだろう」と話す。
 中心商店街は2000年ごろから閉店が目立ち始めた。09年6月に県が実施した調査では、立町や駅前大通りなど8商店会に所属する266店のうち82店が空き店舗だった。
 市商工会議所とタウンマネジメント機関「街づくりまんぼう」などは07年、中心地のにぎわいを取り戻そうと協議会を発足。10年2月には「彩り豊かな食と萬画のまち」を掲げた中心市街地活性化基本計画が、県内で初めて内閣府に認定された。新たな街づくりの胎動が始まった直後に津波が襲い、疲弊する商店街に追い打ちを掛けた。
 一方、中心市街地から約3キロ内陸にある同市蛇田地区は津波の被害が小規模にとどまり、今は震災前以上のにぎわいを見せる。来春には、飲食や美容院などのテナント10店を連ねた複合施設がオープンする予定だ。
 市内の不動産業者は「復興需要で、大型店などは活況だ。車で行動する若い家族層は、確実に蛇田側に買い物行動の軸足を置いている」とみる。
 街づくりまんぼうの西条允敏社長は「中心地は、旧北上川沿いのロケーションなど替え難い魅力がある。市の復興計画とうまく連動して商店の新規参入を促すなどし、何とかにぎわいを取り戻したい」と話している。