岩手県 「東日本大震災:県営住宅の被災者、入居1年後から家賃 仮設は2年間免除」

東日本大震災:県営住宅の被災者、入居1年後から家賃 仮設は2年間免除

毎日新聞110928

◇不公平との声も 県「他住民と平等大事」

 東日本大震災で自宅を失い県営住宅で暮らす被災者に対して、県は入居後1年が経過してからは、収入に応じて家賃を支払うよう求めている。仮設住宅や雇用促進住宅、借り上げの賃貸住宅では2年間家賃が免除されるため、震災直後の混乱期に入居先を決めた被災者からは「不公平ではないか」との声が上がる。【宮崎隆】

 釜石市郊外の県営住宅で、両親と暮らす30歳代の会社員女性は今月初旬、「1年経過後も継続して入居を希望する場合、収入などの基準を満たしていれば有料で入居できる」と記された県の通知書を受け取った。

 津波で市中心部にあった自宅が全壊した女性は、ホテルの待合室で避難生活を送った。当初は「地域の人たちと同じ場所で暮らしたい」と、仮設住宅への入居を希望したが、両親共に70歳代と高齢で父親は高血圧でもある。同時に申し込んだ仮設住宅や雇用促進住宅に先駆け4月下旬に県営住宅に当選し、「とにかく早く落ち着きたい」と入居を決めた。

 県建築住宅課によると震災で自宅を失い県営住宅に入居する被災者は21日現在で83世帯。入居後1年間の家賃は免除されるが、その後は通常の県営住宅の運用規定を適用。控除後の世帯月収が15万8000円以下の場合は入居を認め、収入に応じて最高で3万数千円の家賃を徴収する。免除を1年間に限る理由について県担当者は「低所得で困っている方に提供するという県営住宅本来の使い方に戻す必要があり、震災前から入居している人と平等を図ることも大事」と説明する。

 一方、仮設住宅では2年間家賃は無料となり、入居を延長する場合も免除される。また、被災者向けに借り上げた民間賃貸住宅でも2年間は県が家賃を支払う。厚生労働省も当初、6カ月としていた雇用促進住宅の家賃免除期間を最大2年までに延長した。また宮城、福島の県営住宅では、仮設住宅と同等の待遇とし、原則2年間は家賃が免除される。

 自身の月収12万円と父親の国民年金で生活する女性にとって、仮に月1万円であっても家賃の負担は大きい。いずれは元の場所近くへの自宅再建を望んでいるが、県営住宅を出ざるをえなくなった場合は仮設住宅への転居も考えている。しかし県は「仮設住宅は本来住居がない人のための施設。家賃を払っても恒久的に住める県営住宅に入居できるメリットは大きい」と仮設住宅への転居は認めない方針だ。

 市内の別の県営住宅で、長男家族と暮らす60歳代の女性は震災後、小学校で避難生活を送った。生後間もない孫娘は夜泣きもあり、発熱がなかなか治まらないこともあった。県営住宅が1年で有料になることは入居前から知っていたが、「孫の健康や、他の避難者に迷惑をかけないかが気に掛かって、先のことまで気が回らなかった。同じ被災者なのに入居先によって条件が違うのは不公平だと思う」と首をかしげる。