高線量地域の国有化検討 「警戒区域」長期化も 福島原発
【河北新報110822】政府は21日、東京電力福島第1原発事故で設定した半径20キロ圏の警戒区域について、放射線量が極めて高い一部地域は、原子炉の冷温停止状態を目指す工程表「ステップ2」が完了した後でも解除検討の対象としない方針を固めた。長期化が避けられない場合を見越し、これらの地域について、土地の買い取りによる国有化も視野に対応を検討する。
菅直人首相は27日にも現地入りし、今後の見通しや避難生活が長期化する住民への支援策をめぐり、地元自治体に直接説明したい考え。首相の現地入りは後継を選ぶ民主党代表選の日程や地元自治体の意向を踏まえて調整を進めている。
解除を見送る具体的な地域は、今後の放射線モニタリングなどの結果を見極めて決める。
政府は、来年1月までを期限とするステップ2により、放射性物質の放出が厳しく管理された段階で警戒区域の解除検討を始めるとしていた。
しかし、19日に文部科学省が公表した警戒区域内50地点の震災発生から1年間の積算被ばく線量(屋外で8時間、屋内で16時間過ごしたと仮定)の推計値は、原発のある福島県大熊町内などで極めて高い数値だった。
最も高いのは第1原発の西南西3キロの大熊町小入野で508ミリシーベルトと、緊急時でも20~100ミリシーベルトを超えないよう求めた国際放射線防護委員会勧告の上限の5倍に達した。また大熊町夫沢で393ミリシーベルト、同町熊川と浪江町川房で200ミリシーベルト超。50地点のうち、15地点で100ミリシーベルトを超えた。
こうしたことから、政府は警戒区域見直しを進める場合も、一部地域は対象外とせざるを得ないと判断した。
警戒区域のほか、20キロ圏外に「計画的避難区域」と「緊急時避難準備区域」を設定。緊急時避難準備区域は9月上旬にも解除の見通しとなっているほか、警戒区域のうち双葉町と大熊町にある3キロ圏内について、それぞれ8月26日と9月1日に初の一時帰宅を実施する方針を示している。