【岩手日報120122】国内観測史上最大規模のマグニチュード(M)9・0を観測した東日本大震災。日本海溝寄りの領域で、プレート境界の断層滑りが約100秒間も続いたことで巨大地震が引き起こされたことが、筑波大と京都大防災研究所の共同研究で明らかになった。筑波大の八木勇治准教授(地震学)=釜石市出身=は「同じ領域が長く滑り続けたことで断層滑りが拡大した」と分析。このエリアの謎を解くことが、巨大地震の発生メカニズム解明の手がかりとなると指摘する。
太平洋プレートは、日本海溝付近で東日本が乗る北アメリカプレートの下に年8センチずつ沈み込む。この際に北アメリカプレートの先が引きずり込まれ、ひずみが蓄積。このひずみが解放されてプレート境界面が断層面となって急激に滑り、地震となる。
共同研究は、米国や欧州、中国など世界中の地震計データから、断層滑りのメカニズムを解析。断層滑りは、震源の宮城県沖から始まり20~30秒ほどで、想定宮城県沖のエリアに到達。過去に地震が発生した場所では、破壊が加速した。ここで止
まっていれば過去の宮城県沖と三陸沖南部海溝寄り地震の連動型でM8クラスの地震で終わっていた。
しかし、30~40秒で様相が変わる。三陸沖南部海溝寄りから、さらに日本海溝寄りに断層滑りが拡大。10秒間で8、9メートルの巨大滑りが発生し同じエリアが100秒も滑り続けた。その後、岩手県沖や茨城県沖まで広がり、本震は約3分間だった。
その結果、国土地理院が算出した断層滑りはこのエリアが最大で59・2メートルにも達した。
海溝寄りで滑り続けた原因について八木准教授は複数の説を挙げながら摩擦熱の影響を指摘。「車のタイヤが氷の上を滑る仕組みと同じようにプレート境界面で、岩の間にある水が膨張し、滑りやすくなったのではないか」と推測する。
今回の巨大地震の発生要因を解明するには、大きく長く滑り続けた日本海溝寄りの謎を解くことが鍵になる。
八木准教授は「地震がM9クラスへ成長するための条件や前段階を解明することで対策が打てる。日本海溝寄りがなぜ滑り続けたのかを理解できれば、地震を予測することも可能になる」と述べる。