宮城県、復興計画2次案を決定 今後10年・316事業

河北新報110707】宮城県は6日、幹部職員による震災復興本部会議を開き、県震災復興計画第2次案を正式決定した。2015年度までに災害公営住宅を整備するなど、今後10年間に取り組む316の復興事業を盛り込んだ。村井嘉浩知事は「夢があり、(将来の)可能性を感じてもらえる内容」と語った。(16面に関連記事)
 計画の基本理念として(1)災害に強く安心して暮らせるまちづくり(2)県民一人一人が復興の主体(3)「復旧」にとどまらない抜本的な再構築(4)先進的な地域づくり(5)壊滅的被害からの復興モデル構築―を掲げた。
 まちづくりは住宅や公共施設の「高台移転」、職場と住居を分ける「職住分離」、道路や鉄道に堤防機能を持たせる「多重防御」を打ち出した。復興住宅の全戸に太陽光発電設備を導入し、エコタウンの形成も目指す。
 142漁港は3分の1程度に集約再編し、背後地に流通加工業を集積させる。地盤沈下などで復旧困難な農地は国が買い上げ、緩衝地帯の緑地公園「千年希望の杜グリーンベルト」を整備する。
 養殖漁業の民間参入を促す「水産業復興特区」を含め、八つの分野で大幅な規制緩和を行う「東日本復興特区」創設を求めることも盛り込んだ。県は近く正式に復興特区創設を国に申請する。
 村井知事は「最低限これをやらなければ、宮城県は元気にならないという内容だが、国の支援なしには実現できない」と強調。「10年後に宮城県は飛躍したと言われるよう努力する」と語った。
 県震災復興会議で異論があった「職住分離」を堅持したことは、「被災市町や被災者から要望があり、何とか実現したい強い思いがあった。最後は知事である私の責任で決めた」と説明した。
 県は復興計画を県議会9月定例会に提出する予定。議決後、復旧期としている11~13年度の実施計画を策定する。

◎提案型、制度根拠乏しく

 【解説】宮城県が6日決定した県震災復興計画第2次案は、冒頭で「提案型」計画と銘打った。既存スキームを採り入れた従来の行政計画と違い、制度や財源に裏打ちのない復興事業をあえて盛り込み、国に制度創設を迫る内容だ。被災地の「理想」を形にしたともいえるが、国の対応次第で「絵に描いた餅」となる危険性をはらむ。
 2次案に明記された316復興事業のうち、例えば被災農地の土壌改良費を補助する「被災農地再生支援事業」などは、現時点で国に補助制度はない。農業再生の要になる施策の一つだが、実現には不透明感が漂う。
 国の制度があっても補助率アップや規制緩和が前提の事業も多く、計画全体が根拠に乏しい印象は拭えない。村井嘉浩知事は「国はしっかり受け止めると信じている」と語ったが、確証が得られているわけではない。
 震災発生から間もなく4カ月。国の復興ビジョンはいまだに見えず、被災地が先手を打たざるを得ない現実はある。村井知事も「国を待っていたら復興計画は、いつまでたっても作れない」といら立ちを募らせた。
 2次案は今後、県民説明会の意見なども踏まえ修正されるが、ほぼ最終案に近いとされる。復興計画を具現化するパートナーの国は、政権の不安定さから望ましいありようとはほど遠い。被災者の希望になるよう施策の実現性をどう担保していくか。県にはさらなる知恵と行動が求められそうだ。