津波防災に3基本型 県、復興モデル示す
【岩手日報110524】県は23日、東日本大震災の復興のまちづくりモデルとして、被災集落を高台に移転する「回避型」、津波をV字防潮堤などで逃がす「分散型」、防潮堤などと道路のかさ上げなどで津波を減衰させる「抑制型」の三つの基本型を示した。津波対策の基本方針として防潮堤などのハード整備は百数十年に1度起こり得る規模の津波を対象とすることも提示。今後、市町村ごとに復興パターンを具体的に示し、復興計画の参考として提供する。同日、盛岡市内で開かれた第3回県津波防災技術専門委員会(委員長・堺茂樹岩手大工学部長、委員8人)で県が示した。
回避型は小規模集落を想定し、大津波でも浸水しない高台に移転。分散型は市街地を守るために防潮堤などをV字型に設置し津波のエネルギーを左右に逃がす。抑制型は最前線の防潮堤に加え、かさ上げした道路や鉄道で津波の勢いを減衰、避難ビルの建設なども行い多重防災の手法で被害を防ぐ。
県は三つの基本型を組み合わせ①都市機能が甚大な被害を受けた地域②都市機能の一部は失ったが官公庁や工業地などが致命的な被害を逃れた地域③海辺の集落-ごとの復興パターンも提示。
①は陸前高田市、大槌町などを想定。抑制型を基本に分散型、回避型を組み合わせて根本からの都市づくりを目指す。
②は大船渡市、釜石市などを想定し、分散型で市街地を生かしながら住居を高台に移す回避型の手法も併用。③は小規模集落が想定され、コミュニティーを崩さず高台移転する回避型で対応する。
同日の会合では、復興ビジョン案に盛り込む津波対策の基本方針についても議論。基本方針を「再び人命が損なわれることがない多重防災型まちづくりと、防災文化を醸成し継承することを目指す」と設定し、海岸保全施設、まちづくり、ソフト対策の三つを組み合わせて対策を講じることを決めた。また、防潮堤などの整備目標は、過去に発生した津波を地域ごとに検証し、おおむね百数十年程度で起こり得る規模の津波を対象とするとした。
堺委員長は「地域ごとの被災状況や対策を精査し、たたき台になるものを市町村に提案したい」と話す。
被災状況別に復興パターン3案示す、岩手県
【ケンプラッツ110527】岩手県は沿岸の津波被災地の復興に際し、まちづくりの基本形を被災状況別に三つに分類し、5月23日に開いた県の津波防災技術専門委員会(委員長:堺茂樹岩手大学工学部長)で示した。被災地の各市町村が作成する復興計画のたたき台にするよう促す。
復興まちづくりの基本形は、(A)市街地全壊(陸前高田市や大槌町など)、(B)海側市街地が被災(大船渡市など)、(C)集落が被災(田野畑村など)といった被災状況別に集約した。
都市機能が壊滅したパターンAは、根本から都市の再生を図る。パターンBは、残存する市街地を生かしながら都市を再建する。パターンCは、高台への集団移転などで津波を回避する。
■被害状況別の復興まちづくりのパターン(資料:岩手県)
具体的には、パターンAでは人が集まる住宅地や商業地、公共施設のエリアを高台や山際に配置する。漁業関係施設などを配置せざるを得ない臨海部には、徒歩で避難できる場所に避難ビルや避難タワーを設ける。海岸から山際までを津波の緩衝地帯とし、防潮堤や防潮林、公園、道路盛り土などで多重防災を図る。
■パターンA(市街地全壊)の復興まちづくりのイメージ(資料:岩手県)
臨海部は市街地再建でも住宅は移転
海側市街地が被災したパターンBでは、従来の市街地の再建を基本としつつ、住宅は高台やビルの上層階に移転させる。臨海部の商店や事業所は従前の場所に再建することを前提に、防潮堤などの防災施設を整備する。過去の津波浸水エリアには避難道路の整備と併せて、防浪ビルや避難ビルなどの建設を進める。
■パターンB(海側市街地が被災)の復興まちづくりのイメージ(資料:岩手県)
海辺の集落が被災したパターンCは、コミュニティーを維持したまま集団での高台移転や、集落内で津波の危険性が低い山際への移動を図る。被災地の地盤のかさ上げや避難路の整備も進める。また、職住分離の不便を解消するためにアプローチ道路を整備する。
■パターンC(集落が被災)の復興まちづくりのイメージ(資料:岩手県)