焦点/借り上げ仮設家賃/宮城県の「滞納」深刻化
【河北新報110926】東日本大震災の被災者向けに民間賃貸住宅を仮設住宅として借り上げ、公費で家賃を負担する制度で、借り主となる宮城県の家賃「滞納」が深刻化している。支払い済みの件数は全体の1割未満。入居した被災者らは長期の立て替えを余儀なくされており、「このままでは貯金が底を突く」と悲鳴を上げている。
◎被災者、立て替え限界/家主、収入途絶え悲鳴
「立て替えが半年も続き、家計は限界。いつまで自己負担が続くのか」
仙台市内の自宅が津波で流され、宮城野区鶴ケ谷の借家に移り住んだ女性(53)は、いら立ちと不安を募らせる。家族5人で4月に入居して以来、月4万5000円の家賃を払い続ける。負担額は敷金と礼金を含め約50万円に上るという。
豆腐店を営んでいたが再建の見通しは立たず、失業状態にある。「これ以上の出費は厳しい。蓄えもなくなりそう」と頭を抱える。
宮城県の借り上げ仮設の入居決定件数は、16日現在で2万3360件。このうち家賃の支払いを終えたのは2172件と9.3%にとどまる。
貸主が県に直接家賃を請求する場合、県の「未納」は即減収につながる。仙台市内の不動産業者は「家主側から『行政に協力して貸したのに、いつになったら入金するのか』との苦情が殺到している」と明かす。
「大家から退去を迫られた」。借り上げ仮設に住む被災者から14日、仙台市に深刻な相談が寄せられた。家賃が滞り、貸主が資金難に陥ったためとみられる。同市震災復興室は「本当に退去させられるようなことがあってはならない」と重大視し、県に対応を催促したという。
大幅な支払いの遅れについて、県は手続きの煩雑さや件数の急増を原因に挙げるが、2万1860件(20日現在)を扱った福島県では「ほぼ100%終了した」(建築住宅課)。岩手県でも3898件(15日現在)の大半で支払いが終わり、宮城の遅れが際立つ。
ある不動産業者は「宮城は他県に比べ書類審査が厳しすぎるなど、しゃくし定規な対応が遅れに拍車を掛けている」との見方を示す。
宮城県は支払いの迅速化を図るため、12日に手続きの一部民間委託に着手した。「スピードアップを図り、10月中旬にかけて集中的に振り込みを進めたい」(震災援護室)としている。