気仙沼の復興商店街苦戦
気仙沼市で震災後にオープンした仮設商店街が集客に苦戦している。営業を再開した商店のほとんどが、海側に集中しているのに対し、仮設住宅の多くは、津波に備えて山側に建てられているため、手軽に買い物に来られないことが大きな要因となっている。
同市では震災以降、仮設商店街が6か所にオープンした。「気仙沼復興商店街」は昨年末、市中心部に51店舗が入る被災地最大級の仮設商店街として営業を始めた。年末年始にも重なり、当初は多くの人出でにぎわったが、わずか1か月後の1月末の週末には、買い物客の姿は数えられるほどになった。同商店街の村上力男会長(70)は「飲食店はまだボランティアなど市外の客でもっているが、物販店には仮設住宅からわざわざ買いに来ない」とこぼす。
市内で最も早く11月に開業した「復興屋台村 気仙沼横丁」でも、市外の客が6、7割。「ボランティアはどんどん減っているし、やがては工事関係者も離れていく」と、担当者は地元客に売り込む妙案がないか頭をひねる。
■「車で往復5000円」 仮設住宅の住民の間にも、周辺に商店が少ないことへの不満は強い。
市中心部から徒歩30分以上の高台にある仮設住宅。170戸の住宅に対し、周辺には急坂の下に薬店が1軒あるだけだ。この仮設に住む女性(56)は「たまに外食をしたくても、近くの仮設商店街まで行くにはタクシーで往復5000円もかかる」と話す。
仮設商店街の設置費用は国費で賄われ、独立行政法人「中小企業基盤整備機構」が建物を整備する。同機構は「住宅と商店街を併設できないという制限はない」としており、どこに建てるのかは市町村の判断だ。
仮設住宅と仮設商店街を離ればなれにしたことについて、気仙沼市は用地確保の難しさを理由にあげる。市の担当者は「山と海に囲まれ、平地が限られる中では、仮設住宅の用地確保が最優先。商店街の敷地は沿岸の更地しかなかった」と説明する。
岩手県宮古市では、仮設住宅と同じ敷地に仮設商店街が整備された。同市の担当者は「遠くまで買い物に行けない高齢者のためにも、市主導で住宅と商店を一体で計画した」という。