【朝日新聞110516】宮城県石巻市の復興に向けて専門家に提言してもらう「震災復興ビジョン有識者懇談会」の初会合が15日、同市役所であった。
出席したのは今村文彦・東北大教授(津波工学)ら4人。今村教授は「防潮林は津波を弱める効果が高い。今回の分析をもとに植える位置や幅を改善し、早く 整備する必要がある」と指摘。小野田泰明・東北大教授(都市建築学)は「復興計画を練る初期の段階から市民を参加させるべきだ」と提案した。
市は10月までに3回の懇談会を持ち、12月までに復興基本計画を策定する。
石巻復興へ英知集結へ 初の有識者会議 経済、防災など助言
【三陸河北新報110517】石巻市は15日、震災から復興について各分野の識者から助言を受ける有識者懇談会の初会合を市役所で開いた。今村文彦東北大災害制御研究センター教授 (津波)、小野田泰明東北大大学院都市建築学研究科教授(都市)、重川希志依石巻専修大客員教授(防災)、柳井雅也東北学院大教授(経済)の4人が出席。 震災後の防災対策の在り方や復興に向けたまちづくり、産業経済の復興について提言した。
今村教授は、広域の浸水や2次被害として火災が多かった点など被害の特徴を説明。「津波の破壊力、浸水深との関係を調査する。被害が少なかった防潮林の役割は重要。現時点で積極的に活用すべきだ」と指摘した。
津波対策に関し、「防護ラインのゾーニングと避難計画の策定が重要。市民に県、国が何をしてきたか資料として示す。今回の震災ではどの部分が足りなかったのか。被害の教訓を生かす場が必要だ」と助言した。
小野田教授は「未来を先取りした新しいまちづくりのビジョンが必要。短・中期に共同研究やシンポジウムなどで種を埋め込んでいくことで未来につながる」 と強調。復興計画の立案から合意形成、事業化の過程で「包括的なまちづくり会議を早期に立ち上げ、計画立案段階から住民参加を取り入れる。不足するマンパ ワー確保へ制度設計も必要」と提案した。
柳井教授は「震災による人口減少がクローズアップされる。それを防ぐのに一番いいのは、地域経済の循環を復活させる。主要産業は商業。職住近接で防災の 在り方を考えるべきだ」と提言。「震災特区の指定を受け、万一の際は避難のために上に移動できるアーケードを造る。便利なまちづくりへ工夫し、アイデアを 出すことが必要。高台への移転は行政コストがかかる」と指摘した。
これに対し、亀山紘市長は「石巻市は地域が多様であり、職住近接でいいのか、疑問だ。例えば、雄勝はチリ地震津波の教訓を生かして盛り土した地区も壊滅した。想定外の災害に強いまちづくりにはある程度、政治主導が必要」と力説した。
柳井教授は「市街地は経済性が重要なので提案した。職住分離、職住近接双方を排除するのではない」と述べた。
重川教授は、被災者ニーズのモニタリングや被災者カルテの導入、全庁挙げての復興への雰囲気づくり、産業経済の再生へ元気が出る尺度の設定、目標設定と達成度のモニタリングを提案した。
亀山市長は「早い段階から市民の意見を聞いて計画の策定を進めたい。復興に向けて先生方の協力をお願いする」と話した。
日には別の委員4人が出席して第2回有識者懇談会を開催。経済、福祉、住宅、健康医療の分野で提言する。10月に第3回懇談会を開く。提案内容は、11月末に策定する復興基本計画に反映される。