農業152億円、漁業62億円 千葉銀、震災影響調査
【毎日新聞11728】千葉銀行は、東日本大震災の県経済への影響と今後の復興に向けての調査結果をまとめた。5月現在で、農業関連被害が152億円、漁業関連被害が62億円とし、観光業でも風評被害で、県内への入り込み減少で厳しい状況が続いていると分析している。
県経済に与えた影響で、最も大きかったのは農林水産業で、関連の被害は、農業用施設や農地、集落の排水施設などの破損が2262カ所に及び、被害額は約152億円(5月17日現在)。東京電力福島第1原発事故後の風評被害による農産物の価格低下は、8割程度の産品で、震災前の水準に戻りつつあるが、県内の農協からは「原発の問題が解決しない限り、最終的な終息は難しいだろう」との声が多く聞かれているという。
漁業では、被災漁船数は335隻(被害額約5億円)。被災漁港は全体の2割にあたる13港(同22億円)。市場や荷さばき所の一部も被災が確認されている。国内では、風評被害の価格下落は収まりつつあるものの、輸出は大幅な減少が続き、依然として厳しい状況にあるという。
観光業は、震災による直接の被災は小さかったが、風評被害の影響を大きく受けている。特に南房総地域の観光客は震災直後は前年比9割減、4月は同5割減。5月の大型連休は個人客を中心に同2割減まで戻したが、それ以降6月までは、団体客や外国人客が戻っていない。県外の修学旅行客のキャンセルは約1万人に達している。
南房総地域の今夏のホテルや旅館の予約状況は、6月中旬現在で、前年比5割程度を見込むところが多い。関係者からは「今後3年は弱い基調が続く」「完全な回復までは2年程度」などの厳しい先行きを指摘する声が出ているという。
千葉銀行は「被災状況は地域によって異なり、地域の実情を把握している市町村が主体的に復興を進めるべきだ」と分析。安心・安全を重視した地域づくり▽苦境に立つ産業に対する積極的な支援▽地域や農漁業産物のブランド価値の復活、向上▽環境問題への対応や次世代産業創出など新たな視点での産業復興--などの重要ポイントを提言した。