復興へ・・・芽吹く新産業 浦安復興・液状化との闘い(下)
「危機を好機に」官民が知恵
「液状化被害でダウンした浦安のブランドイメージをどう回復させるか」。24日、新浦安駅前のビルで開かれた市の復興計画検討委員会の初会合。市関係者、学識者に加え、市内企業の代表者らも集まり意見を出した。
市内のホテル関係者は「震災時はホテルも入浴など住民向けサービスに取り組んだ。災害時の企業の協力のあり方を計画に織り込んでほしい」と発言。会合に出席したオリエンタルランド幹部は「様々な意見を参考に企業として支援を考えたい」と話した。
空き家を民宿に
東日本大震災からまもなく9カ月。液状化被害で沈滞ムードだった企業の中から新事業や協働の芽が生まれている。
「ぜひ仕事のやり方を見直してください」。鉄鋼製品の加工・流通基地、浦安鉄鋼団地協同組合の会館に講師の声が響く。震災を機にスタートした事業継続計画(BCP)作りを支援する講習の一コマだ。約270の事業所を抱え、日本最大といわれる鉄鋼団地では全体の約8割が液状化被害に見舞われた。
組合は被災を機に3つのプロジェクトチームを発足。勉強会などを通じて地震をはじめとする災害に備えるBCP作りを後押しする。復旧は進んではいるが、組合の清水範子理事長は「まだ工場の建て直しや廃業を検討しているところもあり、本格復旧はこれから」と話す。
地域の中からも震災を機に新たな動きが出てきた。臨海部に近い入船地区では特定非営利活動法人(NPO法人)「好浦会」と明治大学による空き家活用の取り組みが始まった。家主の協力で東北などの被災者に使ってもらう民宿事業だ。
料金は原則2泊3日で大人2000円。東北の被災地で告知し利用者を募る。岩手県釜石市在住の60代女性は夫や首都圏に住む孫と宿泊。「気分転換になった」と喜ぶ。入船地区は高齢化が進み空き家は今後増える見通し。好浦会代表の水野勝之明大教授は「人を呼び込み地域活性化につなげたい」と話す。
住民参加の映画
人口減に直面している浦安市。震災の影響で2013年度までの3年で約100億円の減収を見込む。定住者呼び戻しに加え交流人口をいかに増やすかもカギだ。観光では東京ディズニーリゾートのある舞浜地区以外への誘客策の重みが増している。
浦安商工会議所などは浦安を映画の街として売り込む下地作りを進める。第1弾が家族の絆をテーマに来年1月全国公開予定の映画「カルテット!」。震災以降も市内各所でロケを継続。エキストラも住民に協力してもらい完成にこぎ着けた。
12月には市内の商業施設で先行公開し、映画にちなむコンサートも開く予定。商議所はロケ地を巡るツアー実施に向けた地図作りにも着手した。「観光などの柱になるように育てたい」と柳内光子会頭は力を込める。
「企業や住民を交えた『オール浦安』の復興体制がようやくできてきた」(松崎秀樹浦安市長)。液状化のピンチをチャンスに変える知恵が官民双方に求められている。