復興計画に注文続々 宮城県市町村会議
【河北新報110630】宮城県が29日の県市町村会議で示した震災復興計画の第1次案に対し、県内35市町村の首長らは多様な注文を付けた。沿岸部を中心に被害が大きかった自治体は住宅、学校の高台移転や放射能対策の充実を求めた。被害が少なかった自治体からは「内陸市町村が果たすべき役割も明記すべきだ」との声があった。
<高台移転>
復興まちづくりの柱として1次案に盛り込んだ集落の高台移転をめぐり、井口経明岩沼市長は移転経費に対する国の補助率が4分の3にとどまることを問題視。必要財源を2兆円以上とはじいた県の試算結果を挙げ「4分の1の市町村負担は耐えられない。財源の保証を国に要求すべきだ」と迫った。
菅原茂気仙沼市長は「平地への移転でさえ、相当の負担になる。高台となれば倍はかかる」と強調。被災前の生活環境を維持したまま移転できるような配慮も求めた。
両市長の要望に村井嘉浩知事は「国が全額負担しないと(高台移転は)絵に描いた餅になる。国に、はっきり意思を伝えたい」と同調した。
丘陵地の深刻な宅地被害への対応を迫られる奥山恵美子仙台市長は「宅地被害は全県的な問題として県の復興計画に書き込む話を知事からいただいた」と話した。
<放射能対策>
福島第1原発事故を受けた県の対応をめぐり、県南の首長は「情報発信が少ない」などと不満をぶつけた。
保科郷雄丸森町長は「放射線量は日々変わる。早めの対策が必要だ」と求めた。滝口茂柴田町長は「町民の最大の関心は、子どもたちの安全安心の確保。県の調査は、農水産物など風評被害対策を優先している印象がある」と指摘した。
会議終了後、保科町長は取材に対し「県は(市町村任せで)当事者意識に欠けている」と述べ、事故発生以降の県の対応の遅さを批判した。滝口町長は「現状の県の情報発信では、安心を担保するまでに至らない」と問題視した。
<内陸の役割>
沿岸と比べ被害が小さかった内陸部の首長からは、「沿岸重視」の計画内容に不満が漏れた。
伊藤康志大崎市長は「内陸による支援や連携、けん引の役割がうたわれていない」と主張。「内陸の企業が頑張れば沿岸の雇用の受け皿ができる」と述べ、内陸部の中小企業への支援を求めた。
交通インフラなどの復興については「全県的なバランスが重要」との主張もあった。
佐々木功悦美里町長は取材に対し「県内全体の復興を考えるとき、沿岸部と内陸部を結ぶ物流機能の整備が欠かせない。道路や港湾だけでなく、JR石巻線、気仙沼線、陸羽東線などの鉄道を充実させることが災害に強い県土づくりにつながる」と語った。