保安員、女川原発でも動員 原発シンポ「やらせ」
【河北新報111001】原発に関するシンポジウムなどで国が電力会社に「やらせ」を要請したとされる問題で、経済産業省が設置した第三者委員会(委員長・大泉隆史弁護士)は30日、東北電力女川原発(宮城県女川町、石巻市)でも原子力安全・保安院の職員が動員などを働き掛けていたとする最終報告書を枝野幸男経産相に提出した。
最終報告によると、保安院などが2006年、女川原発の耐震安全性を住民に説明するため開いたシンポで、保安院の元課長が東北電の担当者に「東北電力の関係者もどんどん参加して、意見を言いなさい」と動員や賛成意見の表明を求めた。
北海道電力泊原発でも資源エネルギー庁の働きかけがあったと認定。08年の泊原発プルサーマル計画に関するエネ庁主催のシンポジウムでは、北海道電の担当者にエネ庁職員が「推進の側で発言いただくことも準備をお願いしたい」と依頼した。
最終報告は中間報告と同様に九州電力玄海原発、四国電力伊方原発、中部電力浜岡原発をめぐるシンポも国の関与を認め、不適切な働き掛けが常態化していたことを浮き彫りにした。
最終報告は「電力会社とエネ庁、保安院との間に相互にもたれ合う関係があったことが一因」と分析。地元首長の同意を得るためのプロセスとしてシンポなどが開かれ、住民理解を深めるという本来の目的より、空席を減らすなどの「外観」が重視されたと指摘した。
国側に、公正性や透明性が不可欠だという認識が希薄で、シンポ運営に関する規範が不明確なまま放置されていたとして、組織改革に取り組むよう求めた。
◎シンポジウム3回、25人参加 東北電力謝罪
経済産業省の第三者調査委員会による最終報告書で、女川原発でも原子力安全・保安院から東北電力への動員要請があったと指摘されたことを受け、東北電の海輪誠社長は30日、仙台市青葉区の同社で緊急の記者会見を開き、「透明性、中立性をゆがめかねない行為だった」と謝罪した。
海輪社長は「当時は(参加要請が)常態化していたと推認される。住民に疑念を抱かせた責任を感じている」と述べた。その上で幹部社員教育の徹底や社外の有識者による専門会議設置などで再発防止を図る方針を示した。
最終報告書が問題視したのは2006年10月に経産省原子力安全・保安院が石巻、女川町で開いた計3回のシンポジウム。同社の調査では関連会社などを含め少なくとも延べ25人が実際に参加していた。
東北電側が原発に理解のある地域住民に意見表明するよう依頼した事実も調査で判明。ただ要請の規模や実際の参加人数は、ともに「記録が残っておらず分からない」(総務部)という。
海輪社長は、社員、地域住民に対する出席の強制は「ともになかった」と語った。
保安院側からの要請に応じたことについて、海輪社長は「もともとシンポを円滑に進めたいという(東北電の)担当者の意思もあり、行き過ぎた行為をしてしまった」と説明した。