集落再建へ3案検討 田野畑の羅賀、島越地区
【岩手日報110522】田野畑村は、東日本大震災による津波で住宅被害が顕著だった羅賀、島越(しまのこし)の2地域の集落再建について、高台移転、浸水した元の場所への居住に加え、津波被害を受けなかった家の残る残存集落周辺への移転―の3案を検討している。残存集落周辺への移転はコミュニティーの維持と漁業など仕事の継続が容易な点が特徴だが、浸水の可能性が皆無ではないなど課題も残す。村は複数の候補地を選び住民の意見を聞いて7月までにまとめる復興計画素案に盛り込む。
3案は有識者による田野畑村災害復興計画策定委員会(委員長・広田純一岩手大教授)が協議中で各案のメリットとデメリットについても精査している。
高台移転案は海岸から1、2キロ離れ、標高160~200メートル地点が候補地。尾根上の平地を宅地化する。津波被害の心配がなく、村中心部とのアクセスが向上するメリットがある半面、漁業が続けにくくなる恐れもある。
残存集落周辺への移転案は、標高20~50メートル地点にある浸水域の外側や浅い浸水域に盛り土し集落形成。残存家屋をよりどころに隣近所の関係が存続しやすいが、津波被害が皆無ではなく、用地確保が課題となる可能性もある。
津波被害のあった元の場所への居住案は、標高0~10メートル地点の浸水域での居住を想定。コミュニティー維持や漁業など現状の仕事が継続しやすいものの、津波への懸念が強く残り、これまで以上の防波機能と避難対策が必要となる。
このほか、島越地区については海水浴場や浜辺にラッキョウ畑などを整備する「津波メモリアルパーク」化する案も示す。住宅被害が少なかった机地区については、流失した机浜番屋群を再生し、明戸地区もキャンプ場を核とする観光地化が望ましいとした。
同委員会は各地区それぞれの候補地を図面化。今後、村が候補地を具体化し、住民への説明会を経て、7月までに策定する復興計画素案に居住地を示す。
上机莞治村長は「住民の意向が一番優先される。その中で、災害に遭わない安全な場所とコミュニティーの維持とをどう調整するかが肝心だ」と話す。
(2011/05/22)