風評被害と移転企業も対象 債権買い取り 14日に新機構準備会設置
【福島民報111007】県内企業の「二重ローン」対策として県と中小企業庁が設立する新機構について、県は東京電力福島第一原発事故で風評被害を受けた製造業や観光業、避難区域指定で移転した中小企業などを債権買い取りの対象に加える方針を固めた。新機構は東日本大震災の被災3県ごとに設立されるが、本県は原発事故が企業活動に大きな打撃を与えていることを踏まえ、独自に支援対象とする。14日に県や中小企業庁、金融機関が機構準備委員会を設置し、12月中の新機構設立を目指す。
6日に開かれた9月定例県議会の商労文教委で県が明らかにした。新機構の支援対象に、風評被害の影響を受けた宿泊施設や観光施設、製造業者、警戒区域や計画的避難区域などの指定で移転を余儀なくされた中小企業などを加える方針を示した。
風評被害は、大幅な売り上げ減などで震災以前の設備投資による融資の返済が困難になり、新たな運転資金の借り入れが困難となるケースを想定している。警戒区域などから移転した企業については、移転前の施設や設備の債務が新たな借り入れの障害となる場合に支援する。
機構準備委員会で支援対象、債権買い取り価格の算定方法などを決定する。中小企業基盤整備機構と県内金融機関が新機構の原資として出資する総額は、設立時は100億円とし、必要に応じて増額する方向で調整する。
新機構は本県と岩手、宮城の3県で東日本大震災に伴う地震と津波の被害を受けた企業の債務負担を軽減し、新たな融資を可能にするよう設立する。震災前に発生した被災企業への債権について、再生可能と判断されれば金融機関から買い上げ、5年程度返済を猶予し事業再生につなげる。
原発事故の被害を受けた企業を新機構の支援対象とする場合、再生可能と判断する根拠、債権買い取り価格の算定方法の設定が大きな課題だ。
新機構が企業の債権を買い取るには、企業の業績見通し、担保としての施設や設備の価値が判断材料の一部となる。だが、原発事故は収束しておらず、風評被害が今後の企業活動に与える影響、警戒区域内の企業の施設・設備の価値を現段階で見極めることは難しい。
さらに、企業が東電から原発事故に伴う損害賠償を受け、賠償金を債務返済に充てる場合、買い取りに影響が生じる。「機構準備委員会で中小企業庁や県内金融機関と慎重に協議し、妥当な算定方法を定めたい」(県経営金融課)としている。