自治体復興でコンサル-野村総研、被災地に提案
【朝日新聞110916】野村総合研究所(NRI)などのシンクタンクが東日本大震災で被災した自治体へのコンサルティング活動を積極化する。自治体にとって復興計画の策定は震災から本格的に立ち直る第一歩。だが、計画をすべて自力で策定し、実行する余裕がない自治体もある。そこに商機を見いだし、シンクタンクとしてのノウハウ蓄積と、宮城県をはじめとして復興を提言してきたことを生かそうとしている。(戸村智幸)
NRIは4月中旬に震災復興計画の策定を無償支援することで宮城県と合意した。3月15日に立ち上げた「震災復興支援プロジェクト」のメンバーが中心になり、宮城県に数人のコンサルタントを常駐させ、「時代の変化に対応した未来志向の復興計画」(山田澤明監査役)を目指した。
宮城県は農林水産業や製造業など甚大な被害を受けた産業再生に加え、少子高齢化など以前からの課題への対策を打ち出すなど、先進的な地域への再構築に向けた復興計画案を8月26日に公表。目標期間を10年間に設定し、復旧期の3年間、再生期の4年間、発展期の3年間に区切った。震災から復旧するだけでなく、新しい宮城県に生まれ変わる決意を込めている。
NRIは災害対策や老朽化した社会インフラのITを活用した再設計などについて以前から提言しており、そのノウハウを提供。また、震災復興支援プロジェクトチームが4月上旬、産業再生や雇用の確保・創出、防災対策など複数のテーマに分けて提言した内容を生かした。NRIの嶋本正社長は「事務局のまとめ役でいわゆる裏方」とし、復興計画案の公表で一段落ついたと達成感をにじませる。
宮城県の次にNRIが狙いを定めるのは被災した市町村。同社のコンサルタントは自治体を回って聞き取りやアドバイスをしている。嶋本社長は「自治体に予算が付いて復興計画を実行に移そうとするとき、我々がコンサルティングという形で支援できる」とし、有償で復興計画を策定する商機ととらえる。
東日本大震災から半年が過ぎ、自治体は長期的な視野で復興に乗り出そうとしている。市町村の職員や地元企業などその地域に根付いた人材が復興計画の中心にいることはもちろんだが、外部の視点を採り入れることで、その地域特有の課題の解決策が見えることもある。シンクタンクが持つ構想力や知見が自治体の復興計画の実効性を高めると期待される。