安心の地住民の手で 釜石・両石、復興案検討始まる
【河北新報110517】東日本大震災の津波で集落の大半が流された釜石市両石町地区で、住民が主体的に地区の復興案を検討する取り組みが始まった。15日は、サポート役の専門家とともに現地を調べた。
調査には、避難所で暮らす住民やNPO法人「環境防災総合政策研究機構」(東京)の事務局長松尾一郎さん(55)、岩手大工学部の南正昭教授(都市計画) ら約30人が参加。住民ら14人でつくる復興促進協議会委員で漁師の松本忠美さん(64)らが案内し、被災状況を確かめた。
視察後の会合には、復興プロジェクトを担当する釜石市職員も参加。2、3カ月の間に3回会合を開いて地区の復興イメージを固め、市に提言することを申し合わせた。
松尾さんは4月末、震災時の行動記録調査のために訪れた市内の避難所で松本さんと出会った。住民が主体的に復興の道筋を議論していることを知り、旧知の南教授に連絡し、協力を申し出た。
両石町は釜石市の市街地から北に約4キロ。両石湾に面し、約220世帯、約650人が主に漁業で生計を立てていた。津波は高さ約12メートルの防潮堤を乗り越え、43人が犠牲となった。原形をとどめる家は十数軒しかない。
「自然を相手に地域の歴史や文化、人を守るお手伝いができれば」と松尾さん。松本さんは「避難所にいる住民の9割が地元に戻ることを願っている。安心して住める地域を実現したい」と話した。(沼田雅佳)