焦点/復興見据え新制限移行/宮城県の建築制限きょう解除

被災市街地復興推進地域に指定された石巻市の門脇町、南浜町地区=9日
被災市街地復興推進地域に指定された石巻市の門脇町、南浜町地区=9日

河北新報111110】東日本大震災の津波被害を受けた気仙沼市や名取市など、宮城県内の6市町の市街地を対象にした建築制限が10日、解除される。制限は被災地の乱開発を防ぐため、最大約1850ヘクタールにかけられた。対象となった自治体は解除後、街区の早期形成や危険地域への住宅建設禁止を盛り込んだ各市町の復興計画に基づき、新たな制限を継続させる方針だ。

◎5市町、推進地域選択/山元町は危険区域指定へ

<最大8ヵ月>
 県が建築基準法84条に基づく制限をかけたのは気仙沼市、東松島市、名取市、南三陸町、女川町、山元町。仮設の建築物や県が許可した建物以外、全ての建築行為を禁止した。人口が多く建築主事を置く石巻市は市の権限で制限をかけることができるため、区域を市独自で指定した。
 制限期間は災害発生日から最大2カ月だったが、震災後に特例法が制定され、最大8カ月まで延長可能になった。6市町のうち東松島市は10月31日に全面解除、5市町が11月10日まで延長した。

<石巻市先行>
 ただ石巻市は半島部の一部(94ヘクタール)で延長したものの、9月11日には市内3地区計約449ヘクタールの建築制限を解除。翌12日、解除地域を国の被災市街地復興特別措置法に基づく「被災市街地復興推進地域」に指定した。
 復興推進地域では2階建て以下、敷地面積300平方メートル未満でしか建物を建てられない。しかも区画整理などを見据え「容易に移転が可能なこと」という条件が付く。制限期間は2年間で、石巻市の場合、2013年3月11日までとなる。
 震災半年での地域指定は、国の事業の具体的な内容も財源も分からない段階での早いタイミング。石巻市は「街づくりを前向きに進める姿勢を早期に市民に示すとともに、政府に事業の具体化や財源確保を促す狙いがあった」(基盤整備課)と話す。
 復興特別措置法は阪神大震災を受け、1995年に制定された。神戸市などは石巻市と同様、建築制限から復興推進地域の指定に移行し、幹線道路や公園の位置などを決め、街区形成を進めた。
 東松島市も11月1日に復興推進地域を指定。山元町を除く4市町も同様の措置を取る。

<39条を適用>
 198ヘクタールが建築制限を受けた山元町は、解除後の11日から建築基準法39条に基づく町の「災害危険区域条例」によって、町の3分の1に当たる約1900ヘクタールを危険区域に指定し、住宅の建築を禁止する。危険区域は集団移転の対象地域だ。
 建築基準法の84条と39条はそもそも目的が異なる。84条は被災後の街づくりが目的であるのに対し、39条は住民の安全確保が主眼。岩手県は宮城県と異なり、39条による制限をかけている。
 山元町は39条による制限を活用する理由について「39条だと制限期間に限りがない。街づくりと同時並行で、危険区域への住宅建設を防ぐ必要があった」(震災復興推進課)と説明する。
 建築制限をかけていなかった仙台市も、山元町と同様に39条に基づく条例で建築制限する方向で調整している。

◎石巻・東松島、自宅再建急ぐ動き/被災者「くつろぎの場早く」/自治体「復興事業で移転要請も」

 先行して被災市街地復興推進地域に指定された石巻市や東松島市の一部地域では、住宅の新築や改築を計画する動きが出始めている。今後固まる街づくり事業の内容によっては、移転などを求められるリスクもあるが、さまざまな理由で再建を急ぐ被災者がいる。

 東松島市では11月1日付で、野蒜、大曲両地区の一部計163ヘクタールが復興推進地域に移行。津波で市内の自宅が全壊した男性(76)は、自分が所有する野蒜地区の畑を造成し、自宅を新築しようと決めた。
 震災前は妻(71)と長女(48)夫婦、孫2人との6人暮らしだったが、全員で入居できる住まいは見つからず、現在は市内のアパートで妻と2人暮らし。家族はばらばらだ。
 「移転を求められる不安はある。それでも一日も早く家を建て、家族6人のくつろぎの場所にしたい」と言う。
 既に2世帯住宅を建てる契約を工務店と結んだ。資金は自宅被害で出た共済金などを充てる。
 復興推進地域での建物の新築、改築などには、建築許可が必要で市町村を通じて申請する。
 東松島市は、申請を受け付ける際に「復興事業に支障がないかどうか判断し、支障が出る可能性があれば、相談させてもらう」(復興都市計画課)と言う。
 9月12日付で449ヘクタールを復興推進地域に指定した石巻市では9日現在、地域内での建築許可申請が5件あり、うち2件が許可された。
 市は「市民から申請の相談があれば、将来、道路などにかかって移転をお願いすることもあり得ると説明している」(基盤整備課)という。