岩手県 「復興住宅こそ地元で モデルハウス展示」

復興住宅こそ地元で モデルハウス展示

復興住宅のモデルハウス。1・5倍の耐震強度と太陽光発電パネルが特徴=宮古市、相場郁朗撮影
復興住宅のモデルハウス。1・5倍の耐震強度と太陽光発電パネルが特徴=宮古市、相場郁朗撮影

朝日新聞111018】震災の被災地で、復興住宅の受注をめざして大手から地元まで住宅メーカーがしのぎを削っている。全国的に住宅着工数が落ち込む中で、大量需要が発生した被災地は注目の的。仮設住宅建設では大手に先んじられた地元企業も、「地元密着」で巻き返しをはかる。

 宮古市の新興住宅街に9月末、平屋建てモデルハウスがオープンした。周囲の2階建て住宅に比べるとこぢんまりとした印象だが、屋根には太陽光発電パネルを備え、補強金具などで耐震性を高めた。通常の1・5倍の強度を実現したとして「地震に強い家」というのぼりを立てた。

 施工した地元の「フェニーチェホーム南洋」がチラシで力を入れて宣伝するのは、床面積50平方メートルの平屋建てで、建設費850万円の家だ。同市の新築では面積も価格もこの倍前後が相場だが、被災者が購入しやすい設定にした。2日間で40組が見学に訪れ、滑り出しは上々。「以前のような大きな家はもう要らない」と話す客もいる。

 社長の坂本和(かずし)さん(46)も被災者だ。市内の自宅と経営する建材会社は津波で全壊し、9月に横浜市の同業者と組んで新会社を立ち上げた。社名のフェニーチェはイタリア語で不死鳥の意味だ。

 被災直後は仮設住宅の仕事を狙ったが、県は仮設住宅約1万4千戸のうち、1万2千戸をプレハブ建築協会(東京)に一括発注。「早期に造る必要があった」(県建築住宅課)とはいうものの、坂本さんら多くの地元業者は結果的に大きな復興需要を逃した。

 「今後の復興住宅まで大手に持っていかれたら、地元の経済が回らない」という危機感をバネに、東北の地域材を使うなどして、地元密着をアピールする。

 地元住宅関連業者らでつくる研究会「みやこ型住宅ネットワーク」も同じ狙いだ。森林組合、建材会社、設計士、施工会社など地域の約20社が横の連携で受注を増やそうと、2003年に組織した。共同で「みやこ発・復興住宅『暖(ぬくだまり)』」を売り込む。

 キーワードは、地元材。壁や天井の部材には、がれき木材でつくった復興ボードを使う。電源不要のペレットやまきを燃やすストーブを備えたのも、被災者の立場を考えてのことだ。やはりサイズはコンパクトで、平屋の44平方メートルで860万円から売り出す。

 一方の大手も、続々と被災地に乗り出している。東日本ハウス(東京)は、震災後、宮古や宮城県石巻市などに出張所を5カ所、新設した。宮古では、数年前に撤退したばかりだった。沿岸の被災地で罹災(りさい)証明があれば、「被災者価格」として通常より約400万円安い930万円で2階建ての住宅を建てる。

 復興需要に注目が集まる背景には、全国の新規住宅着工数が年80万戸と20年で半減した状況がある。被災地では、県内だけでも今後、復興関連だけで1万7千戸の住宅需要が見込まれている。

 みやこ型住宅ネットワークの住宅設計にかかわった県立大の内田信平准教授(建築設計)は、「地域経済への効果だけでなく、地域材の利用を広げることで地元の人工林の再生にもつながる。地域のためにという訴えは被災者にも届くと思う」と話す。