【毎日新聞110617】東日本大震災の被災地・宮城県石巻市で知的障害者の入所施設「ひたかみ園」を運営する社会福祉法人が、障害者と家族のためのケア付き仮設住宅を建設している。家族や自宅を津波で失った知的障害者も多いが、一般の避難所での集団生活は困難が伴う。ケア付き仮設住宅で生活基盤を支える狙いだ。入居予定者は「ケア付きなら安心」と今月中の完成を心待ちにしている。【細川貴代】
同園は震災直後に避難所となり、入所していなかった人も含め知的障害者と家族らが身を寄せ、今は約70人が暮らす。大半がケア付き仮設に入居予定だ。
佐藤紀久子さん(70)もその一人。夫忠義さん(73)や長男智哉さん(30)と避難生活を送る。智哉さんは重度障害があり、忠義さんも手足が不自由。女川町の自宅は津波で流され避難所に入ったが、智哉さんがストレスで大きな発作を繰り返したため同園に移った。一般の仮設住宅での暮らしも困難と考え、ケア付き仮設住宅への入居を決めた。紀久子さんは「何かあっても安心だと思った」と話す。
ケア付き仮設住宅は、同園を運営する社会福祉法人「石巻祥心(しょうしん)会」が同市須江小国の法人敷地内に建設中。23日ごろに完成予定だ。
生活相談を受けるスタッフが24時間常駐し、相談支援や緊急時対応のほか家事や通院を支援する。障害者単身用14室と世帯用40室の2種類があり、単身用は共用部分に台所と居間があるグループホーム形式。日本財団から建設費用約1億7000万円の助成を受けた。入居期間は2年間、水道光熱費は実費負担となる。
同法人の宍戸義光理事長は「家や介護を担ってきた家族が亡くなるなど障害者を取り巻く環境は厳しい。ずっと仮設にとどまるのではなく、本人や家族が仮設を出た後にも地域生活ができるような支援をしていきたい」と話している。