宮城県 「15市町 災害に強い街へ復興計画」

15市町 災害に強い街へ復興計画

読売新聞110527】東日本大震災で被災した県内の沿岸15市町がそれぞれ検討している復興計画や計画の策定方針の概要が、明らかになった。岩沼市は伝統的な屋敷林を津波の防御に活用し、亘理町は海沿いの地域に津波の際の避難ビルの建設を検討するなど、いずれも震災の教訓を生かして災害に強い街づくりを目指しているのが特徴だ。

 県内の沿岸各自治体は被災後、職員や有識者らを集めて、それぞれ独自の復興計画を検討してきた。作業の進捗(しんちょく)状況は自治体によって濃淡があるが、具体化が進んでいない自治体も「市民や農家代表による検討委で協議する」(名取市)など、計画の策定方針を定めている。亘理町を除く14市町の計画は年内にまとまる見通しだ。

 岩沼市は、伝統的な家屋の周囲にある「イグネ」と呼ばれる屋敷林で津波の力を弱めることを計画に盛り込んだ。仙台平野の農村で防風、防雪のために植えられてきた地域遺産を有効活用する。震災で出た大量のがれきを使って沿岸部の各地に丘を造成する津波防災策も検討している。

 仙台市は、今回の震災でガソリンや都市ガスの供給がストップしたことから、「エネルギー確保」を復興計画の柱の一つに据える。電気自動車を配備したり市が独自にガソリンを備蓄したりするほか、ガスなどのライフラインを複数系統にする方向だ。亘理町は、震災の時、海沿いの鉄筋ビルに避難した人が無事だったことから、住民がすぐに避難できるビルを海岸近くに建設することを検討している。

 石巻市は、震災直後に広域停電や燃料不足が起きた教訓から、波力や風力などの自然エネルギーを活用して市内で発電し、電力の確保を目指す計画を立てている。また、市街地で渋滞が起きて物資の輸送に支障を来したため、「次世代型路面電車(LRT)」を導入して自動車のみに頼らない交通体系の構築を検討する。市は「時間も費用もかかる」(基盤整備課)として、中長期的な構想として検討する方針だ。

 こうした県内の状況に比べ、岩手県内では、津波被害を受けた沿岸12市町村のうち、復興計画の構想が固まっているのは久慈市などまだ少数。福島県内でも、自治体ごとの復興計画づくりは本格化しておらず、県が、有識者からなる「復興ビジョン検討委員会」を開いた段階だ。