【東京新聞120129】自治医科大(下野市)の医学部同窓会による東日本大震災支援プロジェクトの報告会が二十八日、東京都内で開かれた。プロジェクト参加者ら約百人が報告を通して総合医の役割を再認識し、今後の医療活動への課題などを検証した。 (清水祐樹)
プロジェクトは震災発生直後、各地の卒業生が支援活動へ意欲を示したことから始動。昨年の三月二十日から九月三十日までの約半年間、主に岩手県南部と宮城県北部の二地域で延べ百十七人が支援活動に当たった。
報告会では、早期に被災地に入った医師が活動を紹介。先遣隊として情報収集に努めた島根県の広域連合立隠岐島前病院の白石吉彦院長は、さまざまな人が集まる大規模避難所を回り「災害医療の専門家だけでなく、日常的な地域医療を支える医師の必要性が分かった」と話した。
第一陣に参加し、その後も二度、被災地を訪れた静岡県立総合病院の牧信行さんは、震災では外傷のほか、心的外傷、感染症、基礎疾患の悪化など多くの派生的な被害が生じたと説明。「多様な症状に対応できる総合医の役割が求められていた」と振り返った。
昨年五月から同窓会と合同で活動した臨床心理士も報告し、跡見学園女子大(埼玉県)の宮崎圭子さんは「心理的な問題は、危機が一段落してから表面化することが多い」と指摘。今後も被災地の臨床心理士を後方支援する重要性を強調した。
被災地で支援を受け入れた岩手県立釜石病院の遠藤秀彦院長らの現地報告もあった。宮城県登米市の布施孝尚市長、同県南三陸町の佐藤仁町長らも出席。布施市長は「住民の健康を守るのは復興の大きな課題。今後も被災地の状況を多くの人に知ってもらい、支えてほしい」とあいさつした。