環境省 三陸復興国立公園に再編 青森・種差から宮城・松島まで

河北新報11019】 環境省は18日、東日本大震災で被害を受けた陸中海岸国立公園と南三陸金華山国定公園などを、「三陸復興国立公園」(仮称)として再編する方針を明らかにした。範囲は青森県の種差海岸から宮城県の国特別名勝「松島」までを想定する。観光活性化で復興を後押しする一方、海沿いの避難路を兼ねた長距離歩道の整備なども検討している。

陸中海岸国立公園の名所の一つ、浄土ケ浜も震災で大きな被害を受けた=18日、宮古市
陸中海岸国立公園の名所の一つ、浄土ケ浜も震災で大きな被害を受けた=18日、宮古市

 この日の政務三役会議で、震災復興に向けた対応方針の一つとして盛り込まれた。環境省は今後、政府の復興構想会議に提案するとともに、公園化の同意を得るため、地元自治体などと順次協議に入る見通しだ。
 構想は水産業、防災と連携した自然公園づくりを図り、復興に貢献することが大きな目的。キャンプ場や展望スポットなど既存施設の改修、新設に加え、津波被害を記録、継承する場づくりや「鎮魂の森」の整備案なども浮上している。

 被災した農業者、漁業者らに協力の輪を広げながらエコツーリズムを推進するなど、新たな雇用創出も模索する。

 陸中海岸国立公園は、国内に29カ所ある国立公園の一つ。久慈市から気仙沼市までの沿岸約180キロが指定区域で、「陸中」の岩手から「陸前」の宮城まで12市町村にまたがる。
 区域内の自治体では約20年前から、漁場や水産物のブランドとして認知度が高い「三陸」に公園名の変更を求める声が高まっており、「陸奥」に当たる八戸市も種差海岸の編入を要望していた。
 地元の意見を踏まえ、環境省は2012年中にも公園の名称変更と拡張の手続きを行う予定だったが、震災の発生を受けて方針を変更。来月にも被害実態の把握と具体的な再編プランづくりの緊急調査に着手する。
 環境省自然環境局は「被災地域の復興、再生を視野に、ゼロベースで新たな国立公園づくりを進める。ブランド化を支援し、風評被害などの打撃を受ける東北観光の起爆剤にもしたい」(国立公園課)と話している。

 

[陸中海岸国立公園]
 久慈市から気仙沼市までの総延長約180キロ、面積約1万2212ヘクタールの海岸公園。1955年指定。宮古市を境に北部は隆起性の段丘海岸、南部は沈降性のリアス式海岸が広がる。岩手県田野畑村の北山崎など、大断崖が続く景観は「海のアルプス」と称される。
 南三陸金華山国定公園 気仙沼市と宮城県南三陸町、石巻市など3市2町に広がる面積約1万3902ヘクタールの海岸公園。1979年指定。リアス式海岸特有の地形が特色。神割崎などの岬や牡鹿半島、金華山などの島々で、大規模な海食崖を形成する。金華山は黄金山神社や野生のニホンジカの生息地でも知られ る。
 特別名勝「松島」 宮城県松島町や七ケ浜町、塩釜市など2市3町に広がる面積約1万2600ヘクタールの景勝地。1952年指定。日本三景の一つで、アカマツやクロマツなどが生い茂る大小230以上の島々が連なる。景観保護を目的に文化財保護法で建築規制がかけられている。