被災地復興で恒久木造住宅、工学院大学らがモデル棟
【朝日新聞110928】東日本大震災により甚大な被害を受けた宮城県石巻市北上町で、工学院大学の教授らによる恒久的に住み続けられる木造住宅モデルの建設プロジェクトが進んでいる。個人住宅10棟(平屋建て3棟と2階建て7棟)と共同住宅1棟を建てる計画。6月に工事に着手し、9月15日に上棟式を迎えた。個人住宅は10月中にも完成し、震災で家をなくした地元の漁民らが入居する予定。プロジェクトを主導する工学院大学の後藤治教授は、「漁業の人に早く生活再建してもらうことで、地域再生の早道にもなる」と話す。
建設地は、沿岸部ながら津波被害を逃れた標高40メートル程度の高台。住宅は国産材を利用し、施工は地元の工務店が行う。約5000平方メートルの用地は、地元企業から低額で借りたもの。初期の土地造成費を含む建設費用約1億7000万円は、住生活グループを中心にした民間の寄付でまかなっている。今後、外構や家具などの費用も、寄付を募りたい考えだ。
建物は、工学院大学が管理運営を行うNPOに無償貸与。NPOが居住者に転貸する。入居者の負担は、月額2万円(平屋)~2万7000円(2階建て)以内になる予定。建物の維持管理などを行う管理費として徴収する。
今回のプロジェクトは、歴史的な建物の研究などで震災以前から現地を訪れていた後藤教授が発案。「用地が少ない中、仮設住宅に時間を費やすより、恒久住宅を作るべきではないか」(後藤教授)という考えからスタートした。
実際、恒久住宅へのニーズは地元でも強い模様。プロジェクトの現場管理を行う、地元建築事務所の熊谷喜彦さんは「仮設住宅は防音の面など住みにくさがある。早く快適な住宅にという声は多い」と話している。