宮城県亘理町 「名簿作りで知り合いづくり、仮設での孤独死防ごう」

名簿作りで知り合いづくり、仮設での孤独死防ごう

住まいるカードの作成に携わる富沢理事長(右)と仮設住宅の担当職員=亘理町の宮前仮設住宅
住まいるカードの作成に携わる富沢理事長(右)と仮設住宅の担当職員=亘理町の宮前仮設住宅

河北新報110901】宮城県亘理町は、町内の仮設住宅団地で、阪神大震災の経験を生かした独自のコミュニティーづくりに乗り出した。阪神大震災で支援にかかわった専門家の協力を仰ぎ、自治組織づくりや居住環境の向上を目指す。手始めとして、個人情報保護の観点から行政が公表できない名簿カードを住民に手作りしてもらっている。
 作成を進めるのが「住まいるカード」と名付けた名簿カード。棟ごとに世帯主と連絡先が分かる様式で、棟ごとに配る。カードの記入は強制ではないが、既に大半が集まり、近く配布予定という。
 町内の仮設住宅は7カ所1126戸で、200戸を超す団地もあるが、地区単位の入居にはなっていない。町総務課の森忠則課長は「居住者名簿は個人情報のため公表できないが、顔見知りになることはコミュニティーづくりに不可欠。カードを住民が自分たちの手で作ることで、その第一歩にしたい」と話す。
 住民からも「同じ棟の人でも両隣しか知らない。名前が分かれば声を掛けやすい」(宮前団地の無職男性・69歳)とカードに期待する声もある。
 最初は棟単位で、次に3~4棟で班を作り、班内カードを共有できるようにした後、団地全体に広げる。これに合わせ、班長や自治会長も決め、自治組織の活動を活発にしてもらいたい考えだ。
 阪神大震災の被災者支援に取り組み、今回のカードの導入を促した神戸市の都市プランナー石東直子さんは「阪神での反省を踏まえ、住民の最小限の関係づくりに役立つものとして提案した」と話す。
 町は、震災後から町内で支援物資の支給などをしてきた仙台市のNPO「生活習慣改善センター」(富沢伊勢雄理事長)を介し、石東さんら5人に仮設生活のアドバイザーを依頼している。
 兵庫県内の仮設住宅では、4年半で約250人が孤独死した。石東さんは「町やボランティア任せでなく、住民が自分たちで生活を快適にしようと思う自治を育むことが大事。名前を呼べる関係は孤独死の防止につながる」と強調する。
 生活習慣改善センターの富沢理事長は「カード作りから始め、亘理方式の仮設のまちづくりを手伝いたい」と意欲的。石東さんらと共に、住民の特技を生かし団地内で大工仕事をする「とんかち隊」や、仮設ブランドの加工品づくりといったプログラムも提案している。