新建築家技術者集団が構成団体のひとつとなっている災害被災者支援と災害対策改善を求める全国連絡会(略称:全国災対連)が「西日本中心の豪雨災害にかかる緊急要望について」を内閣総理大臣と防災担当大臣に提出しました。
2018年7月26日
内閣総理大臣 殿
防災担当大臣 殿
災害被災者支援と災害対策改善を求める全国連絡会
(略称:全国災対連)
西日本中心の豪雨災害にかかる緊急要望について
西日本豪雨災害は、22日までに14府県で218人の犠牲者を出し、平成最悪の豪雨災害となっています。安否不明者は3県で12人に上り、21日午後8時時点でなお13府県の4439人が避難所生活を余儀なくされています。厚生労働省によると、22日午前6時現在、広島、愛媛、岡山の3県で計17,175戸が断水しています。
広島県、岡山県、愛媛県などを中心に、住まいや生業を失い、最愛の家族を失った悲しみがいえないまま、片付け作業に追われるなど被災者は厳しい現実と向き合わざるを得ない日々が続いています。
被災者が一日も早く生活の拠点となる住居を確保し、生業を取り戻し、もとの生活にもどれるよう支援することは政府の責任です。災害被災者の人権を守り、憲法第13条と25条を生かした被災者本位の復旧・復興と防災に国が責任を持って対応することを強く求めるとともに、以下の要求について誠意を持って対応するよう要請します。
記
1.避難所の環境整備、応急仮設住宅の早期設置等について
① 避難所での生活は3週間となっています。猛暑のもとで、クーラーなど空調設備もないことは人道上からも許されません。順次改善が進められているとは思いますが、段ボール等によるベッドの確保、プライバシーの確保、高齢者も利用しやすい洋式トイレをふくめ男女別トイレの設置、医療スタッフの配置による健康の確保など、被災者の人権と健康を最優先にした避難所環境の整備を行ってください。
② 避難所での食事については、弁当やおにぎり、パンのみでなく、内閣府通知のように温かい食事や野菜など十分な栄養がとれるようにしてください。
③ 避難の長期化も懸念されます。災害救助事務取扱要領にのっとり、学校等の公的施設にとどまらず旅館・ホテルを借り上げて要配慮者向け避難所として活用できること、避難所の設置場所は被災自治体内とどまらないことを被災県および自治体に周知・徹底するともに、被災地の実情に応じた借上げ費用の特別基準を定めるため被災県と協議を行ってください。
④ 様々な理由から避難所ではなく自宅やその周辺で避難生活を送っている被災者がいます。避難所にいないことから避難者として認識されず、必要な救助や情報の提供がないまま放置されることがあってはなりません。災害対策基本法第86条の7にのっとり、在宅被災者にも避難所と同様の災害救助が行われるように被災県に徹底してください。
⑤ 応急仮設住宅を早急につくってください。その際、安易にプレハブ仮設とするのではなく、高温多湿な気候から健康を確保するためにも木造による仮設の建築を優先してください。
⑥ 応急仮設の設置にあたっては、被災地のコミュニティの継続を重視した場所の確保と被災者の入居に配慮してください。
⑦ 県市町村営の住宅や雇用促進住宅及び民間賃貸など、いわゆる「みなし仮設住宅」の空き情報を収集し、障がい者、高齢者、乳幼児世帯など要保護世帯が速やかに入居できるよう、県及び市町村に対して国として必要な支援をして下さい。その際、熱射病など二次被害を防ぐために冷房設備を設置して下さい。
⑧ 被災者の医療費、介護保険の一部負担金の免除について、今年10月診療分まで実施するとの通知が出されましたが、免除期間を1年間延長すると共に、国保税、介護保険料の減免制度についても周知するよう県や市町村を指導して下さい。
2.土砂被害地域などにおける迅速な実態把握と対策について
① 不明者のいる3県(広島県7人、岡山県3人、愛媛県2人)をはじめ、今回の豪雨災害の全容を早期に把握してください。
② 過去最大規模の土砂崩れ災害といわれている広島県の被害地域は、重機による作業が望ましいとされていますが、土砂崩れなどにより道幅が狭く、「人海戦術」に頼らざるを得ない状況があります。復旧に向けた土砂除去作業のために、自衛隊の派遣増強も含め国として迅速な対応を具体化してください。
3.罹災証明書の発行について
① 多くの被災者は、避難所へ避難していることや被災家屋の片付け等に追われ、罹災証明書の手続きにまで至っていない実態があります。同時に、全壊・大規模半壊・半壊、床上浸水・床下浸水等の被災判定が、その後の被災者支援に枠をはめる恐れがあります。機械的・画一的に被災者を切り捨てることのないよう、エリア指定等の柔軟な措置を執るなど国として被災自治体に対して対応を急ぐよう徹底してください。
② 広島県では、1階が土砂で埋め尽くされ、住める状況にはないのに「半壊」と判定されたなどの報告があります。被災自治体における判定状況の実態を国として把握し、被害の実態を反映し被災者の生活再建につながる判定を行うよう徹底してください。
4.災害救助法の適用について
①災害に対する「特別基準」の設定(災害救助法施行令3条2項)
災害救助法は、期間や基準額などの「一般基準」の範囲にとどまらず、必要に応じた「特別基準」を設けるなど、柔軟な対応が可能とされています。
一般基準は、適用期間が短すぎて、被災者が対応できない場合が多いと想定されます。適用期間の拡大・延長の措置を直ちに整え、被災者に周知するよう国として立場を明確にし、被災県に徹底してください。
② 災害救助基準「障害物の除去・1世帯当たり135,400円以内支給」を、現行の期間「災害発生から10日以内」を延長することを国として被災自治体に徹底してください。
③ 災害救助基準「災害にかかった住宅の応急処理・584,000円・災害発生時から1ヶ月以内」について、現行の基準「住宅が半壊し、自らの資力により応急修理をすることができないもの」について、収入認定等行わず、申請のあったことについて被災者の立場にたって対応を行うように国として明確にするとともに、被災自治体へ徹底してください。
④ 支援制度の周知徹底
被災地では、「災害救助法」による支援がほとんど知らされていないことが浮き彫りになっています。制度を知らず、あるいは行政の支援を待たず、個々人が業者に障害物の撤去・除去、応急修理等を発注する例が発生しています。
災害救助基準の内容をHPやチラシ等で、被災住民および「自主防災組織」等に周知・適用するよう、自治体に求めるとともに国としても必要な広報と周知を図ってください。
⑤ 広島県における災害救助法適用市町の拡大
広島県内の災害救助法適用は9市4町にとどまっています。県内のほぼすべての市町が被災し、5,000カ所以上の土砂崩壊があったと報道される中、未指定の市町でも指定自治体と同様の支援が必要と想定されます。
国として広島県へ、指定の拡大と再指定もしくは県独自の支援を行うよう徹底してください。
5. 被災者生活再建支援法の適用について
① 被災者生活再建支援法について、被災者に周知徹底する措置をとってください。
② 被災者生活再建支援法にもとづく支援金の最高額を、現状の300万円から500万円に引き上げてください。
③ すべての被災者の住宅再建を支えるため、現状の大規模半壊以上の基準から、床上浸水や一部損壊も含めるよう、支援策を抜本的に拡充してください。
以 上